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こだわり旬の旅

【福島市】古関裕而ゆかりの地を歩く…人々に“エール”送った5000の名曲の原点

[ 2020年10月5日 14:00 ]

福島駅前に設置された古関裕而のブロンズ像。定時になると古関メロディーが流れる
Photo By スポニチ

 9月中旬に放送が再開されたNHKテレビ小説「エール」の主人公・古関裕而の故郷・福島市を訪ねた。地味なイメージながら軍歌からプロ野球球団応援歌、歌謡曲、学校校歌まで作曲作品数は5000曲にも及ぶ名作曲家の古関。町じゅうにエールのポスターが貼られる中、ゆかりの地を回ると流れてくる音楽は知っている曲ばかり。その功績に“エール”を送りたくなった。

 東京から東北新幹線で約1時間20分。福島駅東口駅前広場に降り立つと、ピアノに向かった古関のブロンズ像がお出迎え。09年(平21)8月11日、古関の生誕100年を記念して設置されたモニュメントで、午前8時から午後8時まで30分ごとに古関メロディーが流れる。到着時は高校野球のオープニングでおなじみの「栄冠は君に輝く」。“古関の旅”のスタートにふさわしい名曲だ。

 足取りも軽く駅前通りを7分ほど歩くと「生誕の地記念碑」。古関が長男として生まれた「喜多三呉服店」の跡地で、今は証券会社のビルが建つだけ。それでも同店の看板は、記念碑から徒歩約3分の「古関裕而まちなか青春館」(入場無料、11月30日まで)で見ることができた。幅約5メートルの大きさで、福島市などが所蔵する資料、写真などの展示物の中でひときわ目立つ。実家がいかに隆盛を誇ったかの証といえるが、一方で、家業を継がず作曲家を目指して上京した古関の決意のほどがうかがえた。

 その情熱が半端なかったことは、青春館からバスで約15分の「古関裕而記念館」(入場無料)を見学すると分かる。「とんがり帽子」を思い出させる塔が象徴的な建物で、2階に写真パネルや直筆色紙、楽譜など約600点が展示されているが、目を引いたのが東京都世田谷区代田の書斎を再現した部屋。中央に3つの座卓が置かれ、それぞれに五線紙を置き、周囲を回りながら一度に数曲を作曲したという。

 早大応援歌「紺碧の空」や軍歌「露営の歌」、ラジオ・ドラマの主題歌「君の名は」、東京五輪「オリンピック・マーチ」など5000もの名曲、ヒット曲が生まれたのも納得だが、音符が展示された「長崎の鐘」では途中、短調から長調に転じるという、当時としては画期的な手法で作曲。これにより、悲しみにうちひしがれず未来に希望を持とうというメッセージを打ち出した。

 「古関は音は邪魔と、楽器を使わず作曲。頭に浮かんだ音楽を五線紙に書いていたんです」と館長の村上敏通さん。記念館からタクシーで約10分の信夫山(標高275メートル)第1展望台そばには、作詞・野村俊夫(福島市出身)、作曲・古関、歌・伊藤久男(同本宮市)の「福島三羽がらす」による「暁に祈る」の歌碑が建つが、周囲は鳥の声一つ聞こえない静寂の世界。大好きだった故郷の市街地も望むことができ、古関も喜んでいることだろう。

 ▽行かれる方へ 車は東北道福島西ICから約25分。ゆかりの地巡りには福島駅からのまちなか周遊バス「メロディーバス」か「エール号」(土日祝日運行)を利用すると便利。問い合わせは福島市観光案内所=(電)024(531)6428、古関裕而記念館=(電)同(531)3012。 

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