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こだわり旬の旅

【島根・石見】17m大蛇が大暴れ!石見神楽 スピード&スペクタクルの世界堪能

[ 2020年7月3日 19:00 ]

大迫力の石見神楽の大蛇。これが神楽とは思えない
Photo By スポニチ

 昨年5月、日本遺産に認定された島根県は石見(いわみ)地方の石見神楽。これまでの神楽にないエンターテインメント性がウリと聞いて、新型コロナウイルスの緊急事態宣言発令前に見学に出掛けたが、想像以上の大迫力。近くにある世界遺産の石見銀山や火山の噴火で埋もれた4000年前の太古の森を圧倒するほどで、神楽のイメージを覆された。

 絢爛豪華な衣装と面、早いテンポの太鼓囃子、哀愁ある笛の音、そして軽快に鳴り響く鉦(かね)――。JR山陰線浜田駅からバスで6分。浜田市の三宮(さんぐう)神社で見学した石見神楽はスピード感があり、確かにエンターテインメント性に満ちていた。

 春まだ浅い土曜日夜の定期公演。演目はまず出雲の国「美保神社」の御祭神・恵比須様が釣りを楽しむ様子を舞う「恵比須」。餌に見立てた飴をまいてタイを釣ろうと頑張る恵比須様のコミカルな動きに、会場が沸く。

 気持ちもほぐれ笑顔に包まれる中、次の演目「大蛇(おろち)」でいきなりクライマックスがやって来た。出雲神話「八岐(やまたの)大蛇」が題材だが、登場する蛇が凄い!竹と地元名産・石州和紙で作られた体長17メートルの巨大な蛇で、4匹がステージ狭しと暴れ回るのだ。鎌首をもたげ、火や煙を吹きながら体に巻き付く大蛇の首を、須佐之男命(すさのおのみこと)が切り落とすシーンは圧巻。ストーリー性にあふれ、上演の1時間があっという間だった。

 明治政府から神職の演舞を禁止されたことで地元民に受け継がれ、郷土芸能として進化してきた石見神楽。古事記や日本書紀の物語をベースにした演目の数は30、受け継ぐ団体は130以上で、今井産業という神楽の部活を認める企業も現れるほどだが、これらを支えるのが衣装、面、蛇胴。その製作現場を訪ねると、舞台に負けないほどの熱気がみなぎっていた。

 浜田駅から徒歩23分の「細川神楽衣装店」は、石見神楽の発展に最も寄与した老舗衣装店。金糸・銀糸を使い龍や虎などをあしらえたきらびやかな衣装は、初代・故細川勝三さんが作り始めたもの。1着製作するのに1~2カ月かかるそうで、店内で衣装作りに取り組む職人の手さばきに、しばし見とれた。

 山陰線西浜田駅から徒歩17分の「柿田勝郎面工房」の面造りも負けていない。勝郎さん(78)・兼志さん(50)親子が粘土原型に石州和紙を貼り、細部にまでこだわって作り上げる面は生きているよう。玄関に並んだ作品の迫力につい後ずさりしてしまった。

 これらと対峙する蛇胴を作るのが、浜田駅からバスで25分の「植田蛇胴製作所」。明治期まではウロコを描いた白衣と股引で表現されていた蛇胴を、舞手で神官でもあった初代・植田菊市さんが吊り下げ式の提灯に着想を得て開発。「製法、大きさ、材質は当時と変わっていない」という3代目・倫吉さん(85)の表情は誇らしげだった。

 ▽行かれる方へ 山陽新幹線広島駅から高速バス利用が便利。車は中国道から浜田道浜田IC利用。萩・石見空港からもバスあり。三宮神社の神楽公演は7月4日から再開約1時間で観覧料700円。問い合わせは浜田市観光協会=(電)0855(24)1085

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