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「山家焼き」で知る 南房総の文化 マアジなどの漁師料理“なめろう”がもと

[ 2022年7月1日 07:16 ]

「山家焼き」を作ってくれた「大徳家」の栗原さんと筆者
Photo By スポニチ

 【釣り女子アナの伝えたいこと】釣りが大好きなアナウンサー・大塚ひとみが今回、取り上げるのは「山家(さんが)焼き」。山の食べ物かと思いきや、基になっているのは釣り人なら誰でも知っているあの料理。また体験取材の模様は動画でもお楽しみいただけます。

 「山家焼き」は筆者の地元・千葉県の郷土料理だ。作ってくれたのは「大徳家(南房総市)」5代目の栗原和之さん(58)。メニューとして日本で初めて「山家焼き」を提供した店だ。

 「これ“山”という文字が入っているけど、実は漁師料理の“なめろう”がもとなんだよ」と話す。

 なめろうの発祥は、南房総。マアジなど青魚などを粘りが出るまで叩いたもの。調味料に味噌を使っているのが特徴だ。

 この地域に詳しい、東安房漁業協同組合の長谷川繁男さん(59)が作ってくれた。取材した日はマアジが不漁で材料はブリ。停泊中の漁船で魚を叩く音が心地よく響き渡る。

 「昔の漁は成果が出るまで帰れなかった。簡単においしく食べられて、すぐに漁に戻れる、漁師の知恵だよ」。食べてみると、もの凄い粘り。叩いたことで魚のうまみが出て、さっぱりしてるけど味が深い。「皿をなめたくなるほどおいしい」から「なめろう」と名づけられたのも納得だ。

 ではなぜ「なめろう」から「山家焼き」ができたのか?漁師たちの中には、山仕事を兼業していた人もいたそうだ。その際、なめろうをアワビの殻に詰めてお弁当代わりに持って行き、山小屋で焼いて食べた。これが「山家焼き」になった由来と言われている。

 南房総の文化を後世に伝えようとしている栗原さんは「先人たちがいろいろな食べ方を試し、淘汰(とうた)してできた料理。誇りを持って、南房総の食材・調理法・思いを伝えていきたい」と話した。

◎“若い世代”洋風にアレンジ

 伝統料理である「山家焼き」は若い世代によって受け継がれている。

 「オドーリ・キッチン」(南房総市)のシェフ、山口真幸さん(35)が出してくれたのは、山家焼きが入ったトマトソースパスタ。ハーブが香る爽やかな一品だ。

 和風の山家焼きを洋風にアレンジするにあたり、先輩たちとの試行錯誤があったという。「最初は和風っぽくなりそうと味噌を入れなかったんですが、いろいろなお店の料理を見せてもらったり、味噌と合わせるハーブを研究したりして、今の形になりました」と山口さん。「伝統を守りつつ、僕らの代のオリジナルな形で伝えていくことをこれからもやっていきたい」と続けた。

 ◇大塚 ひとみ(おおつか・ひとみ)1993年(平5)生まれ、千葉県出身。フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局、栃木放送、ウェザーニュースを経てフリーに。釣り歴はカサゴなど小物釣りを中心に20年。

 ▼取材協力 南房総市「寿司と地魚料理 大徳家」=(電)0470(44)1229。オドーリ・キッチン=(電)同(38)5470。

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