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プルプルプル生命感伝わる 小型オイカワの魅力再確認 多摩川でウエットフライ満喫

[ 2022年6月12日 07:10 ]

今回の最小は5・5センチ。ウエットフライで釣ると合わせで魚が飛んでくることがない
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】梅雨の合間を縫って多摩川へ行ってきました。多摩川という川は不思議な川で、全長138キロ、流域人口は約400万人。こんな都市型の川に、上流はイワナ、ヤマメから下流はハゼ類まで、ありとあらゆる魚種が棲息しています。

 高度経済成長時代に中流域から下流は死の川と呼ばれるほど汚染され、もともと多摩川にいた在来種はほとんど姿を消しましたが、汚水処理などの技術が進んで水質が改善し、放流などにより魚が増えました。アユも天然で今年は約250万匹遡上(そじょう)しています。

 そんな多摩川のフライフィッシングとしては大型魚ではないのにオイカワに人気が集まっています。

 実は私も数年前からオイカワの魅力を再認識して年に何回も釣りに行っています。小はこのオイカワから大はバショウカジキまでフライロッドで釣りましたが、この極小魚には愛らしさを感じます。フライにアタックするスピードはヤマメよりも速いです。魅力は釣りそのものよりも、凝った道具にもあります。小型魚なので強度を必要としないため、その道具のデザインは自由。自作することもできるのです。

 以前はヤマメを釣るロッドでダイワ「アルトモア」の2番という繊細なロッドを使っていたのですが、昨年は専用のタックルを作りました。知り合いが竹竿(丸竹の和竿)を改造してオイカワロッドを作っていたので、それをヒントにまねして。

 ネットもほとんど必要ありませんが、ラバーネットで製作。ここまでやって釣る魚の引きがいいとか、たくさん釣れるとかではなく、満足度は一匹の価値になります。

 釣ったオイカワを小型水槽ケースに入れて観察すると、他のコイ科にはない彩りがあります。タナゴの仲間にも美しさはありますが、異なるモノです。

 オイカワ釣りで人気があるのはドライフライです。水面にピシャッと出る果敢なアタックが多いので、なかなかフッキングしませんが、視覚に訴えるものがあって楽しいとみんなが異口同音に言います。

 しかし私はウエットです。これまでニジマスやブラウン、スチールヘッドなど淡水の大物釣りを体験しましたがダウンストリームスイングはフライフィッシングをより広範囲な場所で釣りを可能にしてくれます。

 下流斜めにキャストし、流れによってフライラインが手前に扇状に引かれ、フライは流れを横切るように動きます。これがダウンストリームスイングです。

 それに魚が食いついたとき、大物ならドカンと来ます。オイカワはプルプルプルと小気味よく来ます。それまで流れているだけのフライに小さな魚が掛かり、生命感が伝わってきます。それが面白いのです。

 今回は立川周辺に行ってみました。川の中に立ち込むと、たくさんのオイカワが逃げ惑います。超小型のウエットフライ(サイズ#20)を投げ、下流へ流すと早速プルプルンと来ました。

 それを水槽ケースに入れて写真を撮るとき、ほっとします。放流魚ではなく、全てが天然魚。ナマズやバスそしてカワウの攻撃を受けながらもたくましく繁殖している魚です。「こんなにいるの?」と驚く魚影は川の生態系が豊かな証拠です。

 今回の最小魚は5・5センチでした。

 身近な川で、まるでミニチュアスチールヘッドのように楽しめる魚。小さな巨人。それがオイカワだと思います。

 数釣りに走ったらキリがありませんのでほどほどにしましょう。(東京海洋大学教授

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