×

ヘラで原点回帰 全てに通じるテクニック学べる 東京・府中へら鮒センター

[ 2022年4月24日 07:13 ]

時間延長で待望の1匹を釣りあげた金沢さんと筆者
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】ヘラブナ釣りには釣りの基本と神髄がたくさん詰まっているといわれています。やってみると分かるのですが、魚が餌に食いついているのになかなか釣れません。その合わせのタイミングが重要です。
 またルアーならスナップ一つ結べば釣りができるのに、ヘラブナは仕掛け作りもウキとオモリのバランス、餌の練り具合ももちろんで、どれが狂ってもうまく釣れません。  それを楽しく追求するように釣りをするか、面倒くさいと判断するかなのですが、近年の日本の文化と生活様式が変わったため、若者には人気がなく、ヘラブナ人口はどんどん高齢化しているとも言われています。
 私たちは普段、ルアーやフライ釣りをしますが、年に何回かヘラブナ釣りもします。それはこの釣りをして基本へ戻ることにより、ルアーフライでの発想力が広がるからです。 またウキ1本から水中の情報を全て得て状況を判断し、攻略法を考えるという究極のテクニックは全ての釣りに共通し、上達したいならヘラブナ釣りを経験した方がいいと仲間たちにも伝えています。とはいえ、1人でヘラブナに挑むには敷居が高すぎるため、今回のように集まって「釣幸会」(幸せを釣る)を行っています。 場所は東京都府中市の「府中へら鮒(ぶな)センター」。講師にはマルキユーの研究室長、藤原亮さんにお願いしました。
 例年ですと20人ほど集まるのですが、今回はコロナ禍にやられ感染者、濃厚接触者らでドタキャンが相次ぎ、総勢7人での釣りでした。
 藤原さんからヘラブナの習性、餌の食べ方を学び、水中では餌はこうやって溶けていって、それをこうやって食べるのだということを、水槽を使って見せていただき、初めてそれを見る参加者は驚いていました。
 釣り方はセット。上バリにつけたバラケ(パウダーベイトヘラ)で寄せて、下バリに付けた「わらびうどん(力玉)」で食わせます。
 釣り場がオープンして、レクチャーを終え釣りを開始したのは1時間半後の8時半でした。早速、当たりが出て悩ませてくれるだろうと思っていたのですが、状況が例年と全く違いました。ウキが動かないのです。つまり魚が寄ってこないという意味です。最初の1匹が釣れたのは11時を過ぎたころでした。
 終始、「なぜ釣れない?」をずっと考えていました。藤原さんが試しに底釣りをするとすぐに掛かったので、何人かは底釣りに切り替えましたが、それでも連発には至りません。
 私にはセットで1匹掛かったのみで、ファウルフックも1回しかありませんでした。周りの常連らしき人たちもいつものようにバリバリ釣れていなかったので、この日は厳しい日だったのでしょうか?
 一人ずつ「やっと1匹釣れた」と喜んでいる中、海洋大卒業生の金沢佳子さんの竿だけ曲がりませんでした。午後3時半終了の予定を延長しました。4時を過ぎたころ、彼女はオデコを覚悟したそうです。それでもやり遂げないと悔しさが残ります。他の参加者たちの片付けが終わった4時20分。やっと合わせが決まり1匹釣り上げることができました。
 この1匹の価値は彼女にとって千金かそれ以上に値したことでしょう。淡々と顔色を一切変えずに釣る人よりも幸せなんじゃないかなって思います。
 フライの達人、吉冨健志さんは「ウキを見つめて、集中力を養うという修業になりました」と苦笑いしていました。(東京海洋大学客員教授)

続きを表示

この記事のフォト

バックナンバー

もっと見る