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奇麗な川の恵み75センチコイ 大物パッと狙い撃ち

[ 2021年9月12日 07:14 ]

スレンダーボディーの75センチを釣り上げた筆者
Photo By スポニチ

 【釣遊録】コイを釣りたいなら1日1寸(3センチ)。60センチ(2尺または20寸)のコイを釣りたかったら20日間ポイントに通い、餌を投入して待ち続けなさい、と言われるほどコイはなかなか釣れない魚の代表だった時代がありました。

 しかし、現代の川は下水処理場(水再生センター)の処理能力が進み、川の水は魚がたくさん棲めるほど奇麗になりました。その上、対象魚もいろいろ増えているのでコイ釣りを専門にする人が少なくなったせいか、あるいは別の生物学的な理由からか、コイは身近な釣り対象魚になりました。その理由は前述のニュータイプの川が増えてきていることにあります。都市近郊の中小河川はかつてドブ川と呼べるほど水が汚濁していたという経歴を持ちます。

 そういう川では水質が回復した後、コイやフナなどを放流して、それが自然繁殖しているのです。命の力は素晴らしいものです。

 コイは雑食性で何でも食べます。流れてくるものを吸い込んだり、底の泥を濾(こ)して有機物を吸ったり、また水棲昆虫やエビなども食べます。近隣の住民がパンやポップコーンなどをまいて餌付けしている場合もあります。

 私は師匠の西山徹さん(故人)から多摩川で繁殖しているコイをフライで釣ることを教わってから、その楽しさを今日まで継続しています。餌釣りもするのですが、それは練り餌を団子状にしてその中にハリを仕込む有名な吸い込み釣りではなく、食パンを餌にしたパン流しです。「パンプカ」とも呼ばれるこの釣りは、水面を流れる餌にコイが食いつくシーンを見ることができるので、非常にエキサイティングです。

 いつもは多摩川水系で釣っていますが、今回は大物を求め、埼玉県の元荒川へ行きました。

 この日はコイのもじり(水面の波紋)を探して、なおかつ足場の良い場所から探りました。5・3メートルの長い磯竿は岸辺の雑草をかわすことができます。手前から下流に向かって50センチぐらい流したら回収し、今度はちょっと流心を流すという方法です。

 1匹掛かると周りの魚が警戒しますから、一番大きな魚を狙います。小さい魚が近づいてきたら、ラインを止めるのです。これで餌が不自然に止まりますから、その魚は警戒して餌を食べません。

 ほどなくして大きなモジリを見つけ、小型を2匹避けてから食い付かせました。強い合わせは要りません。前述のようにフッキング抜群のハリですから、竿を立てた時にはハリは掛かっています。PEラインは伸びもなくフッキングしたことを竿に伝えてくれます。

 グーンというよりもビンビンというコイの首振りが伝わりフィッシュオン。一気に対岸へと走ります。その後は慌てず、ゆっくりと刺激せずに上流へ引き上げてくるのです。この戦術で今回はまず60センチ級を。2匹目は野ゴイを思わせるスレンダーな75センチでした。

 ところでコイ釣り人を見ていて感じたことがあります。

 高貴な趣味として、魚に敬意を払っているタイプの釣り人と、近場で釣れる魚ならなんでも相手にし、魚の命をぞんざいに扱うタイプの釣り人がいることです。釣りの行動に格差をつけてはいけないことは分かっていますが、後者の方々は道具立てを見ても分かります。それはルアーやフライ、餌釣りなどジャンルを問わずそういう二極性が見られます。

 私の知る限り都市近郊を流れる中小河川に棲息するコイは、大切に扱われる機会が少ないような気がします。

 釣られた魚の命は、釣った人の手に委ねられていることも承知し、大物を狙う以上、その魚をうまく取り回しできる器具を用意するべきではないかと思います。(東京海洋大学客員教授)

 ▼使用タックル 竿=がまかつ「がま磯カゴスペシャル44―53」、リール=ダイワ「エンブレムX2500C」、ライン=サンライン「シグロンPE」0・8号、ハリス=同「トルネードコング」4号。フック=がまかつ「A1管付鯉鈎」12号。

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