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25センチ大物街道をゆく 清流たどった旅先での出合い

[ 2021年9月8日 07:09 ]

大型に振り回されてやや疲れ気味の筆者
Photo By スポニチ

 【2021 アユ】憧れていた和歌山県・古座川での釣りがついに実現。想像以上に美しい舞台の下で、大型アユとの出合いと対話を堪能することがかなった。(スポニチAPC・恩田 誠)

 同行した横浜市の志村雅二さん(69)、二十数年前から紀伊半島の南端にある古座川に恋焦がれていた。

 彼は5年前にアユ釣りを始め、4年前から古座川での釣りを計画していた。しかし、天候が夢を頓挫させ続けたが、今季、その願いを現実化できた。

 私自身、司馬遼太郎氏の紀行文で古座川の存在感を長年意識していたので、喜んで同行することにした。

 日本有数の清流として知られる古座川だが、上流にダムができて以降、往年の美しさは失われている。一方、最大の支流の小川(こがわ)には、かつて本流が有していた透明度の高い流れが残っている。このため今回は、全て小川で竿を出してみた。

 支流といっても水量は豊富で河原も広く、9メートルの竿が十分に使える。今季はアユの遡上(そじょう)が悪かったために数は少ないが、探り歩けば型の良いものに出合えるとのことだ。
 古座川との合流点から9キロほどの場所にオトリ店を兼ねた民宿がある。常連から情報収集すると、上流部の方が型は良いとのことだったので、そこからさらに15分ほど林道を進み、西赤木集落近くで竿を出すことにした。

 遠めから淵を除くとアユの群れが確認できた。が、透明度の高い水のためか、すぐにこちらの存在が察知され、近づく前に群れは散ってしまった。

 100メートルほど下流に移動した所に竿を出しやすい場所があった。流心の深さは1メートル程度。対岸の大石まで8・5メートルの竿でもなんとか探れそうな場所だった。

 視界に入るのは全て自然物。透明感のある流れ、岩盤含みの広い河原、その周囲には緑深い森林。見回しても、人工物は一切目に入らない釣り場だ。

 当初は流心の際を探ったが気配は皆無。志村さんも同様だが、彼の場合、釣りよりも景観に見入っている時間が多いようだ。

 良さそうに思える場所をあちこち探ったが、当たりは遠かった。そこで、狙いを対岸の際にある大石周りに変更。すると、いきなりの手応え。

 掛けたアユは最初、上流に向かったがすぐに反転して下流に走った。竿がのされそうになったので、私は魚に連れられて一緒に20メートルほど下り、流れが緩やかな場所で竿をため、時間をかけてアユを寄せた。

 タモに収まったのは25センチの大型。体高も胴回りもあり、美しさの中に貫禄が感じられるアユだった。

 結局、2人とも、1日では2桁に満たない釣果だったが、強烈な当たり、引きの強さを十分に堪能した。

 3日間、4カ所で竿を出した。水、アユ、森のどれにも感激したが、それと同じくらい、宿で出会った人々の温かさにも触れられた。美しい自然は、人の心も豊かにする。

 ▼宿泊・オトリ 民食やまびこ(古座川町小川)=(電)0735(79)0002。友釣りは年内可能。日釣り券3300円。オトリ1匹500円。

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