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カジキ調査 リベンジ必ず 大物ヒットもサメの“攻撃”で絶命

[ 2021年8月29日 07:10 ]

サメの攻撃を受けたブルーマーリン(クロカジキ)推定120キロ。次の魚には衛星タグを打ちたいものです
Photo By スポニチ

 【釣遊録】釣りを始めた時、誰もがいつか大物を釣ってみたいと思うことでしょう。特にテレビでよくみたあの松方弘樹さんがやっていたカジキ釣り。トローリングでヒットする夢のビッグゲームです。

 昨年はカジキの行動調査に参加し、静岡県御前崎へ。お誘いいただいたのは大洋丸の船長、松下正春さんでした。スタッフが必要ということで家族も同行しました。

 幸運にも3日間で4匹ヒットし、私が釣った100キロ級に普通のタグを、長男・勇樹が釣った70キロ級に衛星タグを打ちました。2匹ともシロカジキでした。

 衛星タグはポップアップタグとも呼ばれ、9カ月間、カジキにくっついてデータを蓄積し、自動で海面に浮上して、人工衛星を通じて送信されます。

 そして今年もその調査は静岡県の許可を得て継続し、また家族で行ってきました。その時は海況が悪く、ヒットはありませんでしたが、その後、私一人で現地へ行き調査を続行すると、4日目でクロカジキがヒットしました。ヒットしたのは船に一番近いルアーで、ヒット直後船に近い場所でジャンプをしてから一気に走りだし、ジャンプを繰り返しながらラインを400メートルぐらい引き出していきました。テレビで見たあのシーンと同じです。

 それを巻き取るのは重労働です。カジキなんてボートがバックしたりしてリールを巻くだけなんだから簡単だろ?と思う方はぜひやってみてください。私もいろんな釣りを経験しましたが、コレほど体力が必要な釣りはありません。

 揺れるボートに乗り、ただひたすらヒットを待つ。船酔い気味にもなりました。慣れている人は待つ時間も楽しいでしょうけれど、漁船では酔わない私も、トローリングボートだと揺れが違うのでヤバかったです。

 ヒットと同時にその気持ち悪さは吹っ飛びますが、今度は船上での戦いです。タグを打ちたいので速やかに引き上げ、元気なうちに逃すのが理想です。しかし、焦り過ぎるとバラしたり、ラインを切られたりします。

 せっかくヒットしたのに本当によくバレます。口周りが硬いので仕方ないです。

 とんでもない勢いでラインが出て、それが止まってもまた出て、200メートル巻いたらまた100メートル出て、を繰り返しているうちにゆっくり寄ってくるわけです。ボートのサポートもありますが。

 それでもこんなタックルでこれほど強烈なのだから、かなりの大物です。老骨にむち打ってスプールを抑え、ポンピングを繰り返し、まるで筋トレのように頑張るわけです。

 そして約20分後、カジキとしては早い方だと思いますが、魚がこっちへ向かって泳いでくるような気がしたので、全身の力を込め、一気に巻き上げました。リーダーが見えました。

 魚が見えました。

 あれ?2匹いる。

 ヒットしたカジキにもう一匹追尾してきたのかと思いました。回遊魚ではそういうこともよくあります。しかしすぐにそれが間違いだと分かりました。

 サメです。巨大なヤツがカジキに食らいついています。同乗者がギャフ棒で叩くと離れました。

 引き上げたカジキには尾びれがありませんでした。こういう写真が撮れたもの不幸中の幸いでしたが、一歩間違えれば老人と海のようにズタズタにされていたでしょう。

 すでにカジキは絶命していてもちろん衛星タグは打てませんでしたから、今回の調査は失敗です。

 あの巨大魚を生きたままサメに邪魔されずに海へ戻すということは簡単なことではないと認識し、今期中には何とかしたいと次回への意欲を燃やしているところです。(東京海洋大学客員教授)

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