魚にやさしくキャッチ&リリース 放流魚持ち帰り文化に終止符を

[ 2021年6月6日 06:14 ]

釣れた魚は逃がす
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 【奥山文弥の釣遊録】東京都内を流れる多摩川の上流部との境界は羽村堰(せき)。この堰よりも下流は秋川漁協、上流は奥多摩漁協が管轄しています。さらに奥多摩漁協は小河内ダム下までの本流と、日原川を管轄する氷川漁協と連携しているほか、入間川の成木川も管轄しています。それらのエリアでは漁協の増殖義務でヤマメやイワナ、ニジマスの放流があります。

 秋川漁協は羽村堰下1カ所へ3月に2回、奥多摩漁協は全域の各所へ19回(33カ所)放流します。羽村エリアだけでも春の3回(2カ所)は160キロずつですから相当数の魚が放流されたわけです。私は昨年から放流も手伝っていますが、放流日は放流魚を釣りたい人たちが放流前から場所取りをするほど集まり混んでいます。その方々はほとんどが釣ったら持ち帰ります。

 私はルアーやフライで釣って全部リリースしていますが、リリースされた魚もやがて餌釣りで釣れられてしまいます。残念ながら今の多摩川にマス類の制限匹数はありません。

 多摩川に限らず放流魚を釣りに来る人は持ち帰る人が多いです。以前はこんな言葉が飛び交っていました。

 「餌釣りで釣り切られてしまう」「強欲な釣り人が釣れるだけ釣って持ち帰ってしまう」。特にリリース派の人は彼らをまるで川の悪魔と言わんばかりでした。しかし、最近それが違うことに気がついてきました。

 少なくとも40年ぐらい(おそらくそれ以上)前から、多摩川の釣り文化は「プット&テーク」です。釣るために大量放流し、釣れなくなったら行かないというスタイルなのです。

 それでも何年か前までは、ごく少ない生き残りの大型ヤマメを狙ってくる方もいました。「奥多摩ヤマメ」と呼ばれ、私も若い頃は夕マズメを狙い、真っ暗になるまでフライフィッシングをしたものです。

 それでも最近、希望の光が見えてきました。私の住む羽村エリア(奥多摩漁協1区)の年配の組合員の方々の中にゾーニングの話、「ルアー専用区」とか「キャッチ&リリース」という言葉が飛び交うようになりました。まだ行動に移されていませんが、貴重な第一歩だと思います。

 ゾーニングをすることによりルール化すれば魚は残ります。私は逃せと繰り返すのが疲れていましたから、うれしくなりました。

 そしてこの春にヤマメ稚魚約2万匹が放流されました。漁協の義務放流ではありません。資金提供者はあの釣り具のキャスティングを経営している(株)ワールドスポーツです。

 古川尚人社長によれば未来に向けて釣りが続けられるようにと、釣り場環境保全活動を創業50周年を機に始めて、これを続けていきたいそうで、その第1段として本社がある東京の川、多摩川を選んでくれたそうです。羽村にはお店もあるのでそのお膝元として羽村エリアにはそのうちの1万5000匹も。

 その魚たちが繁殖していけるようにするためには今のルールでは無理です。どこかのタイミングでルールを変え、放流したら根こそぎ釣って持ち帰るという文化に終止符を打ちたいものです。

(東京海洋大学客員教授)

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