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カナダの風吹くニジマス58センチ

[ 2020年12月19日 07:06 ]

58センチの大型を釣り上げた中村さん
Photo By スポニチ

【奥山文弥の釣遊録】世界中、どこを探しても魚影が濃いのは釣り人が行かない手付かずの秘境的な場所か、人間がルールを設置してきちんと管理をしている場所だけです。

 有名なアラスカやカナダの人里離れた場所でさえ国や州が釣り区間、期間、持ち帰り制限をしているから魚影が保たれています。

 降海型ニジマスのスチールヘッド(降海型ニジマス)などは自ら持ち上げてはいけないというルールさえあります。実際にヘリコプターに乗ったレンジャーが山中まで監視にやってきます。

 今季、素晴らしい釣り場が前橋市に設定されました。「利根川冬季ニジマス釣り場」です。冬季釣り場自体は何年も前から行われていましたが、持ち帰りOKでした。餌釣りとルアーフライエリアが分かれていましたが、私の印象では「釣れる」という印象はありませんでした。放流日、あるいは直後に行かないと釣れなかったようです。

 その場所が今年からはキャッチ&リリースになりました。「釣れる」という情報を友人から聞き、12日に吉冨健志さん、中村なぎささんとともに出掛けました。

 午前8時の受け付け開始で私たちは8時半スタート。私はフライを流しにくそうな岩が点在する場所を攻めました。30分もしないうちに小さな当たりがあり、これを合わせるとロッドが曲がりました。最初は小さいのかと思っていましたが、なかなか寄らず、結構いい引きをしました。ラバーネットですくったニジマスは40センチ級でした。

 それをリリースして喜んで仲間のいる場所に報告に行くと、そこには巨大なニジマスがラバーネットの中にいました。中村さんが開始わずか10投目で仕留めたそうで58センチもありました。彼女もダブルハンドと呼ばれる両手投げのロッドで釣りました。

 「この辺にまだまだいっぱいいますよ」という吉冨さんも30分後には同じサイズをヒットさせました。

 そこに登場したのは、ダブルハンドフライフィッシングのエキスパート、下沢孝司さんでした。30年前から私と同様、カナダのスチールヘッドに憧れ、釣りに行った仲間です。彼がこの利根川に、カナダの川を重ね合わせたことは言うまでもありません。

 この時、彼が紹介してくれたのはこのエリアを管轄する群馬漁協の組合長・大嶋進一さんでした。大嶋さんによれば、初めての試みだったが大成功。最初は「なぜ持ち帰っちゃダメなんだよ」という意見もあったそうですが、よく釣れたそうです。逃すから魚がいつもたくさんいてまた釣れるということを分かってくれたみたいです。「周年キャッチ&リリースエリアができて、本当にカナダ級のデッカい魚が釣れる日を私も楽しみにしています」と言ったら、「ここはアユ釣りのメッカでもあるので周年営業は難しいけど、来年は期間を延長してやる。釣り人に喜んでもらえるようにしていきたいです」とのこと。

 13日からは持ち帰りOKになりましたが、40センチ以上は1日1人1匹なので、魚影はそれほど薄くならないでしょう。下沢さんや私が楽しみにしているのは来春以降です。年越しして生き残った大型マスが野生化し、美しい魚体に成長し、私たちのロッドを曲げ、リールをうならせてくれることを夢見ています。カナダ以上の可能性に期待しています。 (東京海洋大学客員教授)

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