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“不屈のマイトサーモン”徹底コロナ予防で釣り場守る

[ 2020年4月15日 07:36 ]

清水さんはルアーで良型のマイトサーモンを釣った                               
Photo By スポニチ

 【釣り日和】群馬県桐生市、旧・黒保根村の山奥にあるのが管理釣り場「黒保根渓流フィッシング」だ。新型コロナウイルス禍の下、営業を続けている。徹底した来場者とスタッフ管理で感染に立ち向かう。(笠原 然朗)

 花の季節はまだこれから。三寒四温である。訪れた日、赤城山麓、標高750メートルの管理釣り場にはまだ冬が居残っていた。
 店主である新井裕貴さんの毎朝の日課は、防毒マスクを着け、来場者の体温をチェックすることから始まる。

 「体温が37度以上の方はお帰りいただきます。幸い、今までそういう方はいません」

 物々しい光景だが、「ウイルス感染の危険を減らし、少しでも足を運んでもらいたい」との思いから始めた。毎朝、自らの体温を測りツイッターで公開している。

 「こんなご時世“閉めます”って格好良く言えればいいのですが」。逡巡(しゅんじゅん)もある。だが閉められない事情もある。

 釣り場は昨年の6月22日に鉄砲水で半壊。施設を修復し8月10日に再オープンしたが、台風19号で10月12日にルアー&フライポンドや養殖場が大きな被害を受けた。

 開業20年。「自家養殖の大物トラウトを釣らせる」「水がきれいで釣れる魚がおいしい」と人気の釣り場を襲った2度の災害。新井さんは借金を背負い、マイナスからの再スタートを余儀なくされた。「今度、何かあったらもうダメです」。まさに背水の陣だ。

 広々としたルアーフライポンドでは、隣の釣り人と十分に距離をとり、釣りを楽しむ人たちがいた。静寂の中、リールが奏でる糸鳴りだけが聞こえてくる。

 比企郡の自宅を朝5時に出たという清水厚志さん(45=会社員)は、1・8グラムスプーン、放流後の“テッパン”カラー、オレンジ・金で60センチのマイトサーモンを釣り上げた。「釣れる魚がおいしくて月に1、2回のペースで通っています」

 自分でタイイングしたマラブーオリーブのフライ#12でサクラマスを連発していたのは邑楽郡の小島喜三郎さん(67=会社役員)。栃木・中禅寺湖などにも通い、フライ歴は40年。「フライの魅力は何といっても魚とのやりとりです」と話していた。
 管理棟に戻ってきた釣り人に「手の消毒をしてから入ってくださいね」とマスク越しに声を掛ける新井さん。山を下りずに釣り場を守り抜く覚悟だ。

 ◯…稚魚から自家養殖した大型のヤシオマスを黒保根ブランドの「マイトサーモン」と名付け放流している。清流を引き込んだ養殖場育ちの魚は赤身も鮮やかに美味。わたらせ渓谷鉄道・水沼駅に併設されている水沼駅温泉センターでは「くろほねサーモン」として提供されている。

 ◯…食堂では予約をしておけばヤマメやイワナの塩焼きを食べることができる。1匹500円。炭火の遠赤外線で1時間以上かけてじっくり焼き上げる。釣りはせず、テークアウト用に買いに訪れる客もいる。

 ▼釣況 上信越地区東日本釣宿連合会所属、桐生市・黒保根渓流フィッシング=(電)0277(96)2099。

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