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亡き妻の竿で弔いヒラメ

[ 2019年6月6日 07:21 ]

平川さんは800グラム級のヒラメで亡き妻・博子さんを弔った
Photo By スポニチ

 【飯岡隆正丸 釣り日和】千葉県飯岡~銚子沖のヒラメ釣りが1日、解禁になった。飯岡・隆正丸に乗船。小・中型が中心だが船中ではあちこちで竿が曲がる。今季も期待できそうだ。(笠原 然朗)

 作家・横山秀夫氏の近著「ノースライト」を読んでいて「同心梅」という言葉に出合った。中国の梅で、1つの心(芯)に2つの花が咲く。建築士を主人公にしたミステリー小説の中で、何も言わなくても心と心が分かりあえる夫婦、男女の仲を象徴するものとして登場人物の口から語られる。

 解禁日の船上で、新座市の平川耕三さん(82=建築業)に会った。いつも一緒に釣りをする妻の博子さんが病の床に就いているのを知っていた。病状を聞くと「昨年の12月29日に亡くなりました」。悲しい知らせが帰ってきた。

 けんかをしていても「釣りに行こう」というと機嫌が直る。船ではいつも並んで竿を出し、「釣りの腕は私の方がいいが、大会では博子が勝つ」。夫婦での釣行は500回以上。気心が通じ合った「同心梅」だった。

 芳野幹夫船長が船を止めたのは飯岡沖の15メートルダチ。「博子の竿を使う」と話した平川さんに早速、800グラム級。「入院していても話すのは釣りのことばかりだった」。弔いの1匹になった。

 親バリはチヌ8号、孫バリはトリプル8号。ハリスは6号の飯岡港仕様の仕掛けにオモリは60号。横流しだが、船長はポイントごとに船の向きを変える丁寧な操船を行ってくれる。

 左舷胴の間で釣っていた墨田区の大園雅行さん(57=会社員)は、1キロ超を連発。「タナはベタ底。ヒラメ釣り専門で、釣りは年に4~5回ですが解禁日を狙って乗りました」。当たりがあった時のドキドキ感が「たまらない」。釣れたヒラメは知人にさばいてもらって友人と一杯やるのが楽しみだとか。

 芳野船長は15~17メートルダチで移動を繰り返した。この日のトップは5匹。「ポイントは定まりませんでしたが、まずまずの釣果。7月に入ると水深30メートルまで釣り場が広がり数が釣れるようになります」。ヒラメ祭り、開幕のベルは鳴った。

 ◯…船中最大は大田区の中村三郎さん(70=会社員)が釣った1・5キロ。釣友と2人で乗船。飯岡のほか千葉県大原でもヒラメ船に乗る。「最高6匹釣ったことがある」と言うが毎回、釣果は「知り合いにあげちゃう。釣るのが楽しみだからいいんだよ」。

 ▼釣況 東日本釣宿連合会所属、飯岡・隆正丸=(電)0479(57)5432。集合は午前4時。乗合料金1万2000円。餌の生きイワシ20匹、氷、昼のカレーライス付き。 

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