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コイ焦がれる存在であり続けて 外来魚駆除論に待った

[ 2019年1月19日 07:15 ]

初釣りは家族でコイ釣りが恒例行事
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】初釣りは家族と一緒に多摩川支流の浅川でコイ釣りでした。次男・尚樹はこの日1匹目で72センチというビッグサイズを釣りました。

 最近はテレビでコイにとって悲しい報道が相次いでいます。外来魚だから駆除しろと。

 私が幼少のころから、コイには2種類いて、その一つはノゴイと呼ばれる野生ゴイ。体高が低く、ずんどうで丸太のような体形の魚です。利根川や荒川、霞ケ浦などでのノゴイ釣りも釣り雑誌の記事で取り上げられていました。

 もう一つは養殖ゴイ。明治時代に中国から移入されたという話はその時知りませんでしたが、食用に各地で飼育され、自然水域にもたくさん放流され、繁殖しているということでした。この養殖ゴイが敵対視されています。

 コイ釣りは1日1寸と言われ、30センチのコイを釣りたかったら10日間、同じ場所に通いなさいというほど難しいと言われていました。コイはなかなか釣れない憧れの魚でした。池の主、川の主とも呼ばれる大物の話はどこの場所にでもあったほどです。

 それが時を経て人間が関与することで川の生態も大きく変わりました。食糧事情も変化し、なおかつ生活処理水が入った川では食べる人もいないので、生き残ったコイは大きく成長しています。

 いまこのコイが池の水を濁らせる元凶と言われていますが、そういう池はすべて放置された人造池です。人が水の流れを止めてたまりにした場所には時間の経過とともに泥がたまります。その状態でコイがその食性から泥底の有機物をこして食べたりすると水が濁るとして嫌がられるわけですが、池の管理を怠った人の責任転嫁だと私は思います。ろ過器なし、水換えなしの状態で魚を飼育している水槽はどうなりますか?

 かいぼり、池の水を抜くというテレビ番組で出てくる池底にたまったヘドロは、そこへ流れ込むのはほとんどが家庭生活排水なので、自然現象ではなく人為的なものです。

 あれはコイのせいではありません。自然水域でコイが原因で濁っている池などありません。環境だ生態だという前にまず人造池は管理が重要ですね。

 これからもコイに対してさまざまな評価が出てくると思いますが、私たちはコイを受け入れ、川の王者、こいのぼりのモデルとなった元気の象徴、そして都市近郊の身近な大物釣りとして愛していきたいです。(東京海洋大学客員教授)

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