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海で描いたアオリの放物線

[ 2018年12月18日 15:11 ]

タモに収まったおいしい収穫に、にんまりの鈴木さん
Photo By スポニチ

 アオリイカがヤマ場を迎えた。潮色に餌木を合わせる推理力としゃくりの技で釣果が決まる。その面白さとおいしさに魅せられたマニアが集う茅ケ崎・沖右衛門丸におじゃま虫ました。(スポニチAPC 町田 孟)

 立ち姿が風景になっていた。際立った存在感ではなく溶け込んでいると言った方が正しい。高橋靖彦さん(73=綾瀬市)の動きといえば5〜6秒ごとに繰り返す鋭いしゃくりだけだ。

 「朝、濁りがあったけれど、途中から澄んできちゃいましたねえ」。乗りは渋い。苦戦が続く中、4匹でトップ。1キロオーバーも交じった。「茶色系が良かったみたい」。相模湾の定番色にいち早く対応した読みの成果だ。

 アオリを始めて「7、8年目かな」。スミイカ、アマダイ、カワハギなどもターゲットだ。テクニカル系が好きなのも「その方が釣った喜びが大きいから」。

 すでにリタイアしているが海に出るのは月に1、2回程度。もう一つユニークな趣味を持っているからだ。動に対する静。「写仏です」。写経の図画版といったところ。仏様が描かれた下絵を筆でなぞっていく。近頃は「写真を見ながら輪郭を描き起こして色を付けたりしている」。物腰などに達観した雰囲気を感じさせる要因かもしれない。

 仏像に興味を持ったのは「NHK教育テレビの特集を見ていて、なんて品のある表情なんだろうって」。元々、風景画を描いていた。ところが「下手でねえ。外でやっているとのぞかれるでしょう」。屋内ならその心配もない。「仏様の衣のふんわりした部分がアオリの耳に似ているじゃないですか」。さらりと冗談めかす柔軟さも見せる。

 子供2人は独立して和子夫人(68)と2人暮らし。「料理は好きで、私が風呂に入っている間にやってくれてますよ」。寿司店に同伴した際などに職人さんから教わって磨いた腕を披露してくれるそうだ。ただ今回の4匹は冷凍庫行きと決まっている。「寝かせるとねっとりしておいしくなる」

 お正月に孫3人を含めた新年会の食卓が待っている。

 右舷ミヨシの鈴木道弘さん(57=町田市)は自営業で「昔は週2回、今は1回くらい」。30年のキャリアで遠征もしていたが、最近は相模湾一帯をテリトリーにして「おいしい魚」に狙いを定めている。高橋さんと同様、今や主流となった3メートルの専用長竿を駆使してしっかり3匹キープ。「短いと手首が疲れる。年を取るとこの方が楽」。愛車でのドライブも趣味。「たまに夫婦一緒に温泉巡りする」。どうしても「素顔は嫌だ」と外してくれなかったサングラスの奥には優しい目があった。

 ▼釣況 東日本釣宿連合会所属、茅ケ崎・沖右衛門丸=(電)0467(82)3315。出船は午前6時半。乗合料金は9500円。

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