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ゴマチが築く友情 年齢、キャリア離れていても同じ船で竿出せば仲間だ

[ 2018年5月22日 07:45 ]

竹矢さんはアジで埋め合わせ
Photo By スポニチ

 【根ほり葉ほり おじゃま虫ま〜す】人には出会いがある。このところ東京湾のマゴチが好調。ならばと南六郷・ミナミにおじゃま虫ました。この道30年のベテランと2カ月の新人が釣友になっていく様を見た。(スポニチAPC 町田 孟)

 「おはようございます!」。隣の席からの軽やかな一声は近江秀樹さん(50=会社員)だ。住まいは大田区。「ここ(ミナミ)に近いので自転車通勤。週イチ必ずにプラスアルファ」。マゴチ・アジの後、夜アナゴにも乗る予定のガチな常連。15年ほど前に30キロ弱のモロコを仕留めたともある腕前だ。

 それにしてもこの時季にしては肌の焼け具合が濃い。「ゴルフも」。腕前はシングル級の釣りに比べ90〜100前後とか。サラリーマンの2大趣味を謳歌(おうか)するのも並大抵ではないはず。聞けば「なぜか1人もの。バツもなし」。確かに余裕はある。ただ「ギャンブルにはほとんど手を出さない。釣り道具の1万、2万、パチンコならあっという間」。自制がないと趣味に生きられないものだ。

 出船までにはまだ時間があった。すると、不安げなお客さんには仕掛け、餌の付け方などを教えて回っていた。「東京の街中では絶対会うことのない人たちと会話ができる」。世話好き、話好きは人好きだ。

 そんな近江さんの隣に人懐っこい笑顔が。「よろしくお願いします!初めてなんです」。竹矢昌隆さん(37=会社員)は北区で一人住まい。「料理大好き」で、和・洋・中と何でも来いという。

 「7年間、病気の母の面倒を見ていた。もちろん食事も作っていた」。母親の出身は台湾で実家は漁師だった。「子供の頃ハゼ釣りで勝負をしたけれど10倍の差をつけられた。才能がないよって」。

 父親を小学校の頃に亡くし、女手一つで育てられた。その母も2年前に71歳で他界。「ガンだった」。背負った人生はある。しかし、それに負けない強さがとにかく明るい表情の下に隠されていた。

 昨今、看病、介護にまつわる暗いニュースが多い。話が及ぶと首をかしげ「育てられた恩がある。世話をするのは当然」。心に響く。

 時間に余裕ができて「ヒマつぶし」と新鮮食材調達も兼ねて奥深い世界へ。はまり込むのに拍車をかけたのが初のマダイ挑戦。45センチ=2・62キロを上げた。4月29日のことだった。

 ビギナーさん登場に近江さんがクッと身を乗り出した。手取り足取りのレッスン。「コツンと来たら竿先を送って」。「タナをキープね」。サービス精神フル活動だ。「正しくやればアジなら1日である程度できるようになる。子供と女性は素直だからすぐ覚える。駄目なのは30〜40歳の男たち。言うこと聞かないから」。

 朝のあいさつひとつでお互い気持ちよくなるもの。「帰り際にありがとうって言われればうれしいし、またここへ来て楽しめばいい」

 ミナミの私設宣伝部長、獲物はちゃんと2匹ゲットして実力発揮。竹矢さんは天を仰いだ。「勉強してリベンジだ」。再び顔を合わせることは確か。2人の交わりが生まれた。

 ◯…秋間誠さん(40=江東区)もコチに振られた1人。帰り際のアジで我慢だ。「やられた」。前回はゲットしているだけに無念そう。飲食業を営んでおり、さばくのはお手のモノ。金アジをさて、どう調理して食べたのだろう。

 ▼釣況 東日本釣宿連合会所属、南六郷・ミナミ=(電)03(3738)2639。出船時間、乗合料金は要問い合わせ。

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