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【全国ジャケ食いグルメ図鑑】佐賀県武雄市 店の歴史刻まれた「歌詞カード」

[ 2019年3月22日 12:00 ]

店構え
Photo By スポニチ

 人気ドラマ「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之さんが外観だけで店選びをする「全国ジャケ食いグルメ図鑑」。これまで、店の表の顔である数々の「ジャケット」を紹介してきたけれど、レコードにはもう一つ外せないものがあることにお気づきでしょうか。それは、読めば読むほど想像の翼が広がる「歌詞カード」。どんな文字が躍り、どんな歌詞が出されるのか。「歌詞カード」はお店のもう一つの顔「メニュー」だ。

 今月も佐賀県の店で申し訳ない。2カ月に一回佐賀に行ってるのだ。

 今回は地元では有名店という武雄市の「井手ちゃんぽん」。佐賀でもちゃんぽんはポピュラーな麺類。だが佐賀では長崎と違って、うどんと一緒にやっていることが多いようだ。ちょっと面白い。

 さて、ジャケットつまり店構えはなかなか立派だが、ガラスドアだし、風格や老舗感は正直、それほどない。ガラスドアの右手が出口で、左手が入り口というのが、ちょっと珍しい。こんな分け方をしてる店は少ない。そんなに出入りが多いのか?

 行ったのは午後3時半ぐらいで、客が一番少ない時間帯だった。お昼時や夕飯時は行列ができるのかもしれない。すんなり入れてカウンターに座れた。店の中はテーブル席もあってかなり広い。厨房(ちゅうぼう)が丸見えなのは、作る過程が見えて楽しい。

 だが、今回「おおっ」と思ったのはカウンター上のメニューだ。この書き文字の存在感、貫禄、そして筆致の太いあたたかさに、圧倒された。この店は何を食っても間違いない。そう確信させるほど、文字に力がある。

 店構えを古(いにしえ)のLPレコードジャケットに例えるボクにとって、メニューは歌詞カードであり、ライナーノーツであり、またその店の年表であり、叙事詩であり、地層である。そこには店の歴史物語が書かれるともなく、綴(つづ)られているのだ。ボクは、このメニューを眺めているだけで、酒が3杯くらい飲める。

 ボクはチャンポンを頼み、ここに連れて来てくれた人(地元民ではなく埼玉人。噂でここがおいしいと聞いてきた)は、特製チャンポンを頼んだ。

 チャンポンはラーメン丼より浅い器に入っていて、野菜がたっぷり。豚骨スープも確かに人気なのが分かるおいしさだった。
 しかし、特製チャンポンには驚いた。チャンポンよりひとまわり大きい器で、ドッサリの野菜にキクラゲがこれでもかというほど入っている。そして、麺にそれを乗せた後、生卵を一個落とし、その上にさらにキクラゲ野菜をかぶせる。圧倒的なボリューム。ボクは正直、普通のにしてよかったなと思ったが、ほとんどの客は特製チャンポンを食べていた。見た目より軽いのかもしれない。

 きつねうどんや、おにぎり、いなりがあるのも面白い。そしてカツ丼もおいしいと、あとで聞いた。ジャケットもいいが、とにかくメニューに見惚(みと)れた店だった。

 ◇井手ちゃんぽん北方本店 チャンポン750円、特製チャンポン930円。佐賀県武雄市北方町大字志久高野1928。JR北方駅から徒歩30分、長崎道「武雄北方IC」から車で8分。(電)0954(36)2047。営業は午前10時30分~午後9時(ラストオーダー午後8時30分)。水曜定休(祝日の場合は翌木曜休み)。

 ◆久住 昌之(くすみ・まさゆき)1958年、東京都生まれ。漫画家、漫画原作者、ミュージシャン。81年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として月刊ガロにおいて「夜行」でデビュー。94年に始まった谷口ジローさんとの「孤独のグルメ」はドラマ化され、新シリーズが始まるたびに話題に。舞台のモデルとなった店に巡礼に訪れるファンが後を絶たない。フランス、イタリアなどでも翻訳出版されている。

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