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【さくらいよしえ きょうもセンベロ】蒲田で飲め食え歌え“湯”源郷

[ 2018年11月9日 12:00 ]

「ゆ〜シティ蒲田」の外観。別格に「効く」黒湯を堪能するあまりのぼせる人も(撮影・西尾 大助)
Photo By スポニチ

 温泉に漬かってゆっくり一杯…“センベロ”ライター、さくらいよしえが降り立ったのは京浜東北線蒲田駅。立ち並ぶ居酒屋を横目に「ゆ〜シティー蒲田」にイン。黒湯に漬かってぽっかぽかの体に染みいる冷たい生ビール。これは極楽じゃ。

 平日の午後3時。番台の頭上からとどろく絶好調のカラオケのにぎわい。

 「お風呂上がりは飲んで・食べて・歌って」がキャッチコピーの銭湯だ。

 創業は大正時代。大田区蒲田に根を下ろしたのは昭和28年で、現4代目。平成6年に大々的にリニューアルすると地下120メートルから汲(く)み上げた黒湯温泉とカラオケ付き宴会場が誕生。

 地元の歌好きはもちろん、お医者も薦める名湯を求めて群馬や伊豆の温泉郷からも客が来る。同じ黒湯でもここは別格に「効く」と評判なのだ。

 飲む前に、まずはひと汗かこうと露天の黒湯に漬かる。プルーンのような漆黒の湯は驚くほどなめらかに体を包み込む。42度という絶妙な温度設定と頬をなでる秋風に、体の芯がとろんとろんになっていく。

 あまりの心地よさについつい長湯をし「ぶっ倒れちゃう人いるんだよ。介抱してるうちにまた誰かが倒れちゃう(笑い)」(3代目)と言うほど、効く。

 ちなみに効くのは体だけじゃない。いつからか「この湯に漬かると良いことがある」と噂が広がり、客がメッセージを残す「あしあと帳」には喜びの報告が。試験に受かった、願い事が叶(かな)った。

 また、「別々で来たはずの客同士がカラオケでデュエット後、カップルになっていた!」という良縁成就の証言も。

 パワスポ湯に漬かり、ほかほかになった体に冷えた生ビールを流し込めば嗚呼(ああ)、瞳が潤む。

 枝豆にゆで卵、甘口の肉じゃがに素朴なモツ煮込みを食べながら座敷に足を伸ばす。極楽だ。

 ふと、しずしずとステージに上がる好々爺(や)。名前はいっちゃん。スピーカー4台から流れる前奏にノッて、広々とした舞台でワイヤレスのマイクを握る。

 「♪かまたははねだのふろんとだア〜」

「よっ蒲田のスタアいっちゃーん」

 客席を魅了するいっちゃんは、足掛け十数年の常連さん。ふだんは中華料理店でのアルバイトと家族の介護で忙しく、週に2回ここへ来るのが楽しみだ。「朝11時から夕方6時までしかいないから、短いほう」らしい。大広間に集う総勢7人の豪華な宴の始まりだ。

 飲めて歌えて幸運にあやかれる。老後は蒲田で暮らしたいと語り合う我々一行。いっちゃんのカラオケは92点を記録した。「まだまだヨ〜」。(さくらい よしえ)

 ◆ゆ〜シティー蒲田 番台に座るのは3代目の中村一秋さん(69)と康太郎さん(40)父子。入浴料は大人460円。サウナ入場料付きで730円。上階の宴会場への入場料にもなっている。持ち込み料は1人1000円。本格的な音響設備のカラオケは1曲100円(11曲1000円)で、ステージ上で自由に歌うことができる。日曜日にはプロ歌手によるキャンペーンがある。宴会場で横になることはできないが、入浴は何度でも可能。営業は午前11時から深夜0時。宴会場は11時半から午後10時半まで。東京都大田区蒲田1の26の16。(電)03(5711)1126。

 ◆さくらい よしえ 1973年(昭48)生まれ、大阪府出身。日大芸術学部卒。著書は「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)、「今夜も孤独じゃないグルメ」(交通新聞社)「きょうも、せんべろ」(イースト・プレス)など。

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