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【全国ジャケ食いグルメ図鑑】たまらない自然体のうまさ 注文に応じた“裏技料理”も…

[ 2018年10月19日 12:00 ]

「大衆食堂 村上」の外観
Photo By スポニチ

 人気ドラマ「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之さんが外観だけで店選びをする「全国ジャケ食いグルメ図鑑」。高校時代って、育ち盛りとはいえ、なんであんなに腹が減ったんでしょう。学校帰りに寄る食堂での焼きそばやラーメン、どんぶりメシの思い出は忘れられない風景ですよね。今回はそんなノスタルジーを呼び起こす「大衆食堂」を広島県福山市で見つけました。

 ライブをしに行った、広島の福山で発見した店だ。「大衆食堂 村上」。自ら「大衆食堂」を名乗る店もずいぶん少なくなった。ボクはこの大衆食堂が大好きだ。気取ってなくて、こびてもなくて、正直な気がする。こじゃれてなくて、かっこつけてなくて、自然体のまま、安くておいしい食べ物を提供している感じがする。

 この店は、店名より「大衆食堂」の文字がずっと大きいのが、ボクにはたまらない。

 角地にある。だから入り口が2つ。この写真の入り口が、間口が狭くてシブい。のれんが手作りっぽくて可愛い。小さな手洗いがあるのもステキだ。道路の「止まれ」の標識も、店構えの一部になっているかのようだ。

 入ってみると、テーブルが2つと小上がりに座卓が2つ。カウンター席が3つ。その目の前が鉄板になっている。

 そう、ここは食堂とうたいながら、メニューは、焼きそばと焼きうどんと関東煮だけ。あとは飯とみそ汁。焼きそば好きなボクには、このシンプルさがたまらない。

 まずビールをもらって、セルフサービスの関東煮。真っ黒い汁に浸った関西風のおでんを、関東煮というのはいつも不思議だ。2種類の牛串が一本100円で、他は一本80円。安い。豆腐だけ別の薄い汁に入っている。ボクは豆腐とさつま揚げと卵と牛串をもらった。おいしい。常連ぽいお客さんも入ってきて、やはりビールとおでんを頼んでいる。

 焼きそばと焼きうどんは550円。大と特大もある。大衆的な値段。看板に偽りなし。

 焼きそばは鉄板で焼く、お好み焼きスタイル。具はキャベツともやしと豚肉。ソース味。青のりに加えて、白ごまがかかっている。もちろん紅しょうがも添えてある。まさに大衆食堂的な焼きそば。ボクはこういう焼きそばが一番好きだ。ああ、シアワセ。

 しかし、一緒に入ったバンドメンバーは、関東煮の後、焼きそばを頼まず、こしゃくなまねをした。飯を頼み、牛串を2本のせ、タレをかけ回した上に、店主に言って、なんと刻みねぎを乗せてもらったのだ。初めて入った店で、まるで常連のような技をかました。でも、ご主人は「裏技ですね。やる方多いですよ」とニコニコ対応してくれた。ちょっともらって食べたら、これがまたウマイ!顔がほころぶ大衆味だ。見た目に反して甘めのタレがなんともいい。七味を振るのもオツだろう。

 この店、あらゆる面ですんごい好み。ボクは高校時代に、学校の近くに、こんな店があった。焼きそばとラーメンだけの店。学校帰りによく行った。そういう懐かしい、現代に失われつつある、ゆったりした空気が流れていた。

 地方では、どんなごちそうより、こんな店に出合えた時が、実は一番うれしいボクなんです。

 ◇久住 昌之(くすみ・まさゆき)1958年、東京都生まれ。漫画家、漫画原作者、ミュージシャン。81年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として月刊ガロにおいて「夜行」でデビュー。94年に始まった谷口ジローさんとの「孤独のグルメ」はドラマ化され、新シリーズが始まるたびに話題に。舞台のモデルとなった店に巡礼に訪れるファンが後を絶たない。フランス、イタリアなどでも翻訳出版されている。

 ◆大衆食堂 村上 焼きそば普通550円、特大700円。関東煮はセルフサービスで、牛串100円、その他の具は80円。広島県福山市三吉町南2の9の19。(電)084(922)0764。営業は午前11時〜午後7時。日曜定休。

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