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【さくらいよしえ きょうもセンベロ】マスターの畑から直送 新鮮野菜仁王立ち

[ 2017年4月14日 12:00 ]

カウンターで笑顔の(左から)及川さんご一家。右端はアルバイトの塚本さん
Photo By スポニチ

 花の季節、遠足気分で訪れた埼玉・浦和。センベロライター、さくらいよしえが訪れたのは地元で知る人ぞ知る名店「浦和 弁慶」。鮮度抜群の肉と、自分の畑で育てた野菜…ほろ酔ううちに思った。今度、生まれ変わったら…。

 浦和の風情あふれる「裏門通り」のもつ焼き屋「浦和 弁慶」はなぜか野菜もうまいと評判だ。タオルはちまきの父上、ミスター弁慶は66歳。

 「朝は毎日、畑仕事。450坪もあるんですよ。ついにクボタの耕運機、買っちゃった。今は準備の時期。ナスにキュウリにトマト、何でも作ります」。実家は農家。10代から青果市場で野菜審美眼を磨き独立するが、得意先に飲食店が多く、ひそかに、もつ審美眼をも磨くと36年前に開店。両刀の弁慶だ。

 「今はジャガイモにハマってて、10キロ5000円(種が)もする“インカの目覚め”、それにペルー産の“マチルダ”も最高よ」と野菜愛が止まらない。

 「“マチルダ”は貴婦人の味わいと評されます。でも“貴婦人の味”がボクにはまだわかりません」とほほ笑むのは2代目(次男)。

 当店の信条は「野菜は肉や魚と切っても切れない深い仲」。ふわりと甘いポテサラに大トロのマグロカマ刺しのツマ、大根まで瑞々(みずみず)しい。

 しかしわしが一番胸を打たれたのはモツだ。ジューシーなガツ刺しに肉感的なミミ刺し、そして「カシラ」。当方無類のカシラ好きだが、店によって部位も味も全然違う。

 そのナゾが今宵(こよい)解き明かされた。

 「うちは毎朝市場から頭ごと買うんです。まず首からカット、つらをはぎ、こめかみからナイフを入れてアゴをはずす。まだ温かいのよ〜」 

 鮮度抜群の頭からは、4種の部位がとれる。

 赤身のこめかみにプルンとしたマルチョウ風の鼻、サクサクとろけるトントロ、そしてかむほどに味わい深いアゴが絶品。 

 夢のカシラ四重奏が1本串に…!

 わしは今まで本当の豚を知らなかった。こんなごちそうになるならば、来世はカシラになってもいい気分だ。

 間もなくレタス箱の中で元気に育ったという三男坊も加わり、気付けば厨房(ちゅうぼう)も一家四重奏。母さんが搾る生キウイ割りに酔いながら、壁のソフトボールチームの写真を見る。「父さんはピッチャー兼監督。県代表で、“ねんりんピック”も出てますよ」

 ミスター弁慶は、鍬(くわ)も握ればかしらもさばき、その上魔球も放つのだ。無敵か?「そうねえ。悩みは畑のキャベツにつく虫ね。モンシロチョウかな」

 浦和の弁慶の泣き所はチョウチョだった。 (さくらい よしえ)

 ◆浦和 弁慶 “ミスター弁慶”こと及川昭三さん(66)、末子夫人(64)、代表を務める次男の圭さん(39)、三男の幸三さん(34)の親子4人とアルバイトで店を切り盛り。チームワークも抜群だ。さいたま市食肉中央卸売市場から仕入れる肉は鮮度が命。辛味噌でいただくカシラは絶品だ。とれたて野菜の季節はこれから。人気は夏の「万願寺トウガラシ」だとか。生ホッピーを提供するのはホッピー好きとしてはうれしい。埼玉県さいたま市浦和区仲町2の15の9。(電)048(831)0915。営業は午後5時から11時。日曜、祝日、第2土曜日定休。

 ◆さくらい よしえ 1973年(昭48)大阪生まれ。日大芸術学部卒。著書は「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)、「今夜も孤独じゃないグルメ」(交通新聞社)、「にんげんラブラブ交叉点」(同)など。

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