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【全国ジャケ食いグルメ図鑑】札幌「こぶ志」真夜中に開く締めの名店

[ 2017年1月27日 12:00 ]

札幌すすきののおでん屋「こぶ志」の外観
Photo By スポニチ

 人気ドラマ「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之さんが外観だけで店選びをする「全国ジャケ食いグルメ図鑑」。寒さが身に染み、おでんがおいしい季節。お店ごとに味つけや種ものに違いがあるほか、地域色も豊か。今回訪れたのは札幌・すすきので深夜0時すぎに開店する“締めの名店”。タラコやワカメに「タチ」と呼ばれる“ご当地おでん”も絶品です。

) 北海道は札幌に行った。すすきの。札幌には何度も行っているけど、すすきのは車で横を通り過ぎたくらい。

 好みの飲み屋を探して歩き回ってみたけど、シブイ店も結構ある。この店「こぶ志」はかなりすすきのの外れにあった。シャッターの閉まった店構え(ジャケット)を見て、シブイなあと思ったけど、夜7時前でやっていなかったから、休みなんだと思っていた。そしたら、札幌の人に、この店がなんと夜中の12時に開店すると聞いてビックリ。

 その12時に行ってみた。開店していた店を見た瞬間、これは地元の人に教えてもらわなくても、絶対ジャケ食いだと思った。

 真っ赤なテント看板はライトアップやライトダウンでなく、内側からの照明。透過光が美しい。年月がこのテントにいい渋みと味わいを出している。白抜き文字の店名も目にやさしく、ハッキリ読みやすい。

 その下の、洗いざらしの白い暖簾(のれん)がまたたまらない(店構えをレコードジャケットとすると、暖簾はオビあるいはタスキだ)。真ん中は一瞬、日の丸のように見えたが、よく見ると赤い提灯(ちょうちん)のイラストで、アルファベットで「KOBUSHI」と書いてある。カワイイ。暖簾の左端に小さく「すすきの こふ志」と書いてある。「ふ」に濁点がないのは、何かの縁起担ぎか。暖簾は上からの照明で、こちらは反射光の白がまぶしい。

 さらに大きな円柱状の提灯も立派だ。「やき鳥」「おでん」「もつ煮込」と読みやすい太い字で書いてあり、なんとも親しみが湧く。店の中は全然見えないけれど、この店は味的にも値段的にも、安心なんじゃないだろうかと思える、非常にいいジャケットだと思う。もっとも、深夜12時から開く店が怪しい店構えでは、敬遠されるが。

 店に入った。5人掛けのカウンターだけの狭い店内。に、見えたが奥に進むと、どっこい奥が左側にL字形に曲がっていて、靴を脱いで上がる畳敷きの、座敷型カウンター席。ちゅうぼうからは見えない。こんな構造の店は初めて見た。面白い。

 ボクはおでん鍋の前に座った。もう他でいろいろ食べてきたので、おでんで日本酒を飲もう。北海道のおでんの特徴は、今まで自分が入った経験では「フキ」と「たけのこ」と「タチ」が必ず入っているのが特徴。フキは緑でシャキシャキ。たけのこは細いヒメタケだ。そしてタチはタラの白子のことだ。この店のそれらもおいしかった。

 さらにタラコのおでんがユニークだった。見たことないくらい太いタラコが厚み1センチくらいに輪切りにされていて、細切りのユズとネギがのっている。日本酒のアテによい。

 写真でワカメのつゆに見えるのは、ワカメのおでん。味噌汁わんに入れて出てくるのだ。でも食べるとたしかにおでん。カラシを付けて食べるとますますおでん。このほかに、どうしても定番の大根としらたきを食べた。

 最初燗酒(かんざけ)を飲んでいたが、からだがあったまってきたので、冷酒に変える。「くーる男山」。この酒、味はとてもおいしいんだが、ジャケットデザインが軟弱すぎる。ボクにはちっとも日本酒としてうまそうに見えない。

 メニューを見ると、焼き物も、豚・鳥・牛とあり、つくねや野菜も充実している。塩辛やイカ納豆も、北海道だし期待できる。

 おにぎり、しそごはんに煮込み丼なんていう腹にたまるものもあるから、水商売の仕事終わりに疲れた人や、締めに何か食べたい人にもありがたい店だ。店を切り盛りするご主人と女将さんが、とても穏やかで感じいいのが、なによりのごちそう。ジャケットの魅力そのままの居心地よさだった。

 ぜひ札幌で深夜まで飲んだ日には、最後に寄りたい。最後の切り札的な店を知った。

 ◆こぶ志 おでん種は大根、ハンペン、串ダンゴなど主に200円、たけのこ、フキなど300円。焼き物は鳥串など300円からで、煮込み丼は700円。北海道札幌市中央区南7条西4、札幌市営地下鉄南北線すすきの駅から徒歩約5分、(電)011(531)9025。営業時間は午前0時30分〜午前6時。日曜定休。

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