野口聡一さん“らしく”JAXAに別れ 引き際は「功遂げ身退くは、天の道なり」

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)を6月1日付で退職する宇宙飛行士の野口聡一さん(57)が25日、都内で記者会見した。博識の野口さんらしく、ジャンルや時代を超えた著名人の言葉を引用して自身の心境を伝えた。
金色のネクタイにスーツ姿で会見に臨んだ野口さん。26年間で3回の宇宙飛行を成功させ、退職に至った経緯について「昨年3回目のミッションを終えた頃から後輩宇宙飛行士に道を譲りたいと考えるようになった」と説明した。6月以降は「1人の民間人として宇宙を盛り上げたい」と退職後も教育や研究活動など、宇宙関連の仕事に意欲。「宇宙は民間人が旅行に行く場所になっているので、水先案内人として活動できたら」とも語った。
引き際を決めたことについては、道教の開祖とされる老子が「道徳経」で説いた「功遂げ身退くは、天の道なり」を引用。「一つのことを成し遂げたら、次の人のために身を退くのが正しいやり方であるという意味。この言葉が退職を決断するきっかけになった」と明かした。
宇宙を目指す次世代の若者に向けて贈った言葉は「諸君の未来圏から吹いて来る 透明な清潔な風を感じないのか」。詩人宮沢賢治が1927年に母校の岩手・盛岡中の在校生に向けて依頼を受けた「生徒諸君に寄せる」からの一節で「宇宙は人類共通のフロンティアであり、我々の“未来圏”そのものです」と呼び掛けた。
今後、宇宙や月に行く可能性を問われると、元SMAP中居正広(49)の発言を口に。20年に中居が事務所退所を発表した際に行った会見でSMAP再結成などさまざまな可能性について語った「1~99%の中にある」。野口さんは「民間人として行くチャンスはあると思っている。中居くんじゃないですけど、全ての事象は1~99%の中で決まる」と可能性がゼロではないことを強調した。
宇宙滞在日数は344日で若田光一さんに次ぐ日本人歴代2位。四半世紀を宇宙飛行士として走り抜けた野口さん。6月以降は“オンリーワン”の存在として新たな一歩を踏み出していく。