アルツハイマー病に世界初の根本治療薬 米FDA承認 共同開発のエーザイ株が急騰

[ 2021年6月9日 05:30 ]

米食品医薬品局が承認したアルツハイマー病新薬「アデュカヌマブ」(バイオジェン提供、AP)
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 米食品医薬品局(FDA)は7日(現地時間8日)、日本の製薬大手エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病新薬「アデュカヌマブ」を承認した。認知機能の低下を抑える根本治療薬として承認されるのは世界で初めて。

 アルツハイマー病の既存薬が症状を一時的に軽くするのにすぎなかったのに対し、アデュカヌマブは何が画期的なのか。それは脳内の有害なタンパク質「アミロイドβ(ベータ)」を減少させる効果が認められた点だ。

 アルツハイマー病は発症の20年ほど前からじわじわと脳内にアミロイドβがたまり、神経細胞が徐々に壊されて認知機能が低下すると考えられている。この蓄積したアミロイドβを取り除く薬がアデュカヌマブだ。企業側によると、3種類の治験で18カ月投与した被験者でアミロイドβが59~71%減少。薬の働きによって病気の進行を遅らせる効果が期待されている。

 FDAは治験からは効果は不確実としたが、深刻な病気に苦しむ患者に新たな治療法を提供するため「迅速承認」という手続きで承認。条件として有効性を確認する検証試験の実施を義務付けた。期待通りの効果が得られなければ、承認の取り消しもあり得るとしている。

 副作用として、画像診断で脳内の一時的な浮腫が見られたとも指摘。無症状の人もいるが、頭痛や錯乱などを伴うこともあるとして注意喚起した。4週間に1回の点滴投与で、価格の目安は患者当たり年約610万円と高額な点も課題だ。

 それでも、軽度認知障害の人が発症を予防したり、初期の認知症の症状悪化が抑えられたり、医療や介護の負担が減ることへの期待は募る。東京株式市場ではエーザイへの買い注文が殺到。SMBC日興証券の田中智大アナリストは「日本企業では(がん免疫治療薬の)オプジーボ以来の久々の大型新薬だ」と指摘。2030年ごろには世界での年間売上高が1兆円を超えると予測した。

 アデュカヌマブを巡っては19年3月、有効性が示される可能性が低いと判断され臨床試験の中止を発表。同年10月、治験のデータを追加して再解析した結果、有効性が見られたとして承認へと向かった経緯がある。エーザイは「高齢化が進む中、発症を遅らせることが社会貢献につながれば」としている。

 ▽アルツハイマー病 認知症の一種。神経細胞が減って脳の一部が萎縮し、生活に支障が出るほど記憶力が低下したり、日付や曜日、自分のいる場所が分からなくなったりする進行性の病気。脳内にアミロイドβとタウという2種類のタンパク質が蓄積しているのが特徴で、これらが神経細胞の減少と関係していると考えられているが、決定的な原因は明確になっていない。日本国内の認知症患者は2020年に約600万人と推計されアルツハイマー病が6割以上を占める。

 ▽エーザイ 国産新薬の開発を志す内藤豊次が1936年(昭11)に創業した桜ケ岡研究所が前身。44年に日本衛材と合併。51年には、今も続くビタミン剤のヒット作「チョコラ」シリーズを開発。広く親しまれるようにと、チョコとコーラをもじって命名した。55年「エーザイ」に社名変更。乗り物酔い防止薬「トラベルミン」や胃腸薬「サクロン」、ハンドクリーム「ザーネ」など知名度の高い薬が多い。2010年代に入ると一時売り上げ低迷も、抗がん剤「レンビマ」などで回復。

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