踏みにじられた“尾身提言” 田村厚労相「自主研究」扱い 批判許さぬ菅政権の姿勢ありあり

[ 2021年6月5日 05:30 ]

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は4日、衆院厚生労働委員会で、東京五輪・パラリンピック開催による感染状況への影響や対策などに関する独自の提言を緊急事態宣言の期限を迎える20日までに公表する考えを明らかにした。この提言に関し、田村憲久厚生労働相は「自主的なご研究のご成果の発表だと思いますので、そういう形で受け取らせていただく」と述べた。大会運営には「感染症対策調整会議」の専門家2人の意見が反映されているとした。

 永田町関係者は「尾身氏に対して“自主研究”なんてバカにしている。政府は都合の良い時には“専門家、専門家…”と言っておいて、政府にとって耳障りな話をすると踏みにじるような態度に出る」と憤った。分科会は、医学的見地などから政府の感染症対策に助言するために、新型コロナ特措法に基づいて設置された機関。そのトップに対して信じ難い発言だ。

 日本学術会議の任命拒否問題で、政府に批判的な新会員を認めず、一切の批判を受けつけぬカラーがあらわになった菅政権。今回もその体質をうかがわせた。尾身氏が「何のためにやるのか」と五輪開催へ懸念を示したことについても丸川珠代五輪相が「別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらい」と語り、こちらも“政権カラー”が如実に表れた。ほかにも自民党内で尾身氏に対して「野党じゃないんだから」との声も漏れた。

 背景には分科会VS政府の構図がある。ここでも意に沿わぬものは受け付けない姿勢が見える。分科会は水面下で独自提言を練り上げてきたが、永田町関係者によると「先月末にも、感染ステージごとの大会運営方針をまとめた案を公表する方向だったが、政府のストップがかかった」。政府は緊急事態宣言の解除後に観客の有無などの方針を打ち出す方向で、分科会からステージ次第では無観客開催も選択肢に含む独自提言が出るのを嫌ったとみられる。

 菅義偉首相は、緊急事態宣言の延長を受けた先月28日の会見で「緊急事態宣言下でも五輪を開催できるか」との質問を受け、明確な答えを避けた。尾身氏は「緊急事態宣言の中での五輪なんて絶対に避けるべき」との認識。依然として中止や延期を求める声が強い中、政府がその提言を「自主研究の発表」として無視するなら国民の厳しい視線は免れない。

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