さらばファントム…茨城・百里基地周辺の人々も惜しむ声「ずっとあるものだと思っていた」

[ 2020年11月23日 15:36 ]

引退する自衛隊の戦闘機「F4EJ改ファントム2」(撮影・岸 良祐)
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 さらばファントム。1971年の導入以来、日本の空を半世紀近く守り続けてきた航空自衛隊の戦闘機「F4EJ(改)ファントム2」が2020年度限りで引退し、大空に別れを告げる。

 F4は米航空機メーカーのマクドネル・ダグラス社製。「ファントム」は亡霊や幽霊を意味する愛称だ。西側諸国を中心に主力戦闘機として広く採用され、総生産機数は5000機を超える。

 日本でも主力機として合計140機が航空自衛隊に納入されたが、老朽化で後継機の配備が進み、19年度末には26機までその数を減らした。現在実戦配備で現役なのは航空自衛隊百里基地(茨城県小美玉市)の第301飛行隊所属機のみ。航空ファンには“老兵”の意味も込めて「ファントムおじいちゃん」と親しまれ、自衛隊グッズ販売店などではモチーフにしたぬいぐるみやステッカーなども売られている。

 百里基地の近くにある複合施設「空のえき そ・ら・ら」で地元産の生乳から作った乳製品などを販売する小美玉ふるさと食品公社の工場長、木村智信さん(44)はファントムを子どもの頃から見て育った。「ずんどう型のシルエットにアナログ感の強い機体。ずっとあるものだと思っていたので…」と寂しがる。

 木村さんは、19年からファントムのイラストを描いたパッケージのヨーグルト(1本税込み150円)を販売。イラストは容器の周りに巻かれており、3本並べると絵が1機に見える。同機の引退を間近に控え、一目見ようと全国各地のファンが集まっていることから、記念になる物を準備した。

 「地元では騒音問題など基地との対立もあり、これまで(自衛隊関連の)おみやげ品がなかったんです。でも、個人的にはこれをいかして、もっと小美玉や百里を知ってもらおうと思いました」。初出店した同年の航空祭では4000本のヨーグルトが完売する人気だったという。

 ヨーグルトがファンのみならずパイロットにも親しまれるようになったという矢先の引退に肩を落としたが、木村さんは「ここ百里にはファントムが保存、展示されていますし、忘れることはありません」と話し「ファントムのパッケージのヨーグルトは、引退した来年以降の販売も検討しています」と前向きだ。

 取材のために現地を訪れた11月上旬、引退を記念して特別塗装が施されたファントムが雲一つない青空を瞬く間に横切った。機体には輝く「Phantom Forever(ファントムよ永遠に)」の文字。周囲には空を見上げるファンの笑顔が広がっていた。

 ファントムの主たる任務は日本領空に許可なく近づく航空機に対し警告や退去、航路変更を呼びかける対領空侵犯措置で、常に日本における防衛の最前線にいた。これを担ってきた同部隊は三沢基地へと移動し、最新鋭ステルス機F35Aが任務を引き継ぐ。

 「もうずっとファントムを撮ってきたけれど、今日のことは一生忘れないだろうな」隣でカメラを構えていた男性がポツリとつぶやいた。2機のターボジェットエンジンの轟音とともに飛び去った、見渡す限り広がる紺青の空は重役から解放される老兵の心模様を表しているかのようだった。

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