前代未聞 金正恩氏、韓国大統領に謝罪 北朝鮮軍の韓国人射殺事件「思いも寄らない不始末」

[ 2020年9月26日 05:30 ]

 北朝鮮による韓国人射殺事件で、韓国大統領府は25日、北朝鮮側から同日午前に通知文が届き、この中で金正恩朝鮮労働党委員長が「文在寅大統領と南の同胞たちに大きな失望感を与え、非常に申し訳なく思う」と謝罪したと発表した。通知文は北朝鮮の朝鮮労働党統一戦線部名義。金氏は「ただでさえ悪性ウイルス(新型コロナウイルス)の病魔の脅威に苦しむ南の同胞」の助けになるどころか「思いも寄らない不始末」を起こしてしまったとし、謝罪の趣旨を韓国側に伝えるよう指示したという。

 北朝鮮の最高指導者が、韓国トップに対し謝罪するのは異例中の異例。コリア・レポートの辺真一編集長も「前代未聞のこと」と驚きを隠せなかった。

 金氏が前代未聞の謝罪を行った背景には、北朝鮮の逼迫(ひっぱく)した国内事情がある。辺氏によると、8月から9月にかけて立て続けに3つの台風が北朝鮮に上陸し、農作物などに大きな被害が出た。苦しい国内経済に加えて、食料危機も深刻な状態に陥っており、「今後、韓国に頼らざるを得ない状況になるのは明白。そういったそろばん勘定が働いたのではないか」と分析した。

 もちろん、単なる謝罪だけで韓国世論が納得するはずもない。辺氏は「(金氏が)自分の名前で謝罪することによって、逆に自分は全く関与していなかった、ということを強調する意味もあったのでしょう」と説明。今後、朝鮮人民軍の幹部の処分、再発防止策の策定を経て、北朝鮮側は韓国側に対話の再開を持ちかけるとの見方が強い。思惑通りに、災い転じて福となす、となるかどうか。

 《02年には故金正日総書記が》北朝鮮トップが韓国に謝罪した唯一の前例とされているのが、2002年5月に金正恩氏の父親である故金正日総書記が、訪朝した故朴正熙大統領の長女で後に韓国大統領となる朴槿恵議員と会談した時。正日氏が、1974年に在日韓国人で北朝鮮工作員でもあった文世光が独立記念日の式典で、朴大統領を狙撃し、陸英修大統領夫人が流れ弾で死亡した“文世光事件”に触れ、「私は知らなかったが、お母さんには悪いことをした」と直接謝罪。ただ、韓国大統領への直々の謝罪は前例がない。

 ▽韓国人射殺事件 北朝鮮に近い韓国領・延坪島近くの海域で違法漁業の取り締まり活動をしていた韓国海洋水産省所属の男性公務員が、21日に失踪。亡命を図ったとみられている。男性は22日に海面に浮いているところを北朝鮮の漁船に発見され朝鮮人民軍が男性に漂流の経緯、亡命意思の有無を確認。人民軍が夜になって船上から一方的に銃撃して男性を殺害し、新型コロナ流入を警戒して、海に油をまいて遺体を焼いた。

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