九州豪雨被害拡大…熊本・球磨川“暴れ川”の猛威「バックウオーター現象」

[ 2020年7月7日 05:30 ]

 熊本県南部の豪雨で6日、球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」の入所者で心肺停止だった14人を含め、新たに27人の死亡が確認された。死者は計49人、心肺停止1人、行方不明11人。猛烈な雨は宮崎、鹿児島両県にも降り注ぎ、長崎と佐賀、福岡3県に大雨特別警報が発令されるなど、九州北部まで広がった。被害拡大の一因には「千寿園」付近で発生したとみられる「バックウオーター現象」も指摘されている。

 停滞する梅雨前線の影響で、熊本はこの日も激しい雨が降った。川が増水して再び通行できなくなった地区もあり、警察と消防、自衛隊の捜索や救出活動は難航。降り始めの4日未明から生存率が下がる目安の「72時間」が迫る中、住民や捜索隊らは、もどかしい時間を過ごした。

 豪雨は九州全体に広がった。気象庁によると、宮崎県串間市付近で1時間に約120ミリの雨が降ったとみられる。鹿児島県鹿屋市でも109・5ミリを記録し、この地点の観測史上最多を更新。同県南さつま市では、新聞配達員の男性(63)が行方不明となった。

 降り続く雨により、被害の全容把握に時間がかかるとみられる中で、逆流によって水があふれる「バックウオーター現象」が被害を広げた可能性が指摘されている。

 多くの犠牲者が出た熊本県球磨村の「千寿園」では、敷地の東を流れ下る支流「小川」が、水かさの増した球磨川に行く手を遮られ、逆流したとみられている。国土地理院は、浸水の深さを画像などから解析。ホーム南東の川沿いにある耕作地などでは8~9メートルに達した可能性があるとした。球磨川は日本三大急流の一つ。流れが速い「暴れ川」で、注ぎ込む支流も多い。

 バックウオーター現象は、近年の水害で各地に大きな被害をもたらしている。2018年7月の岡山県倉敷市真備町の水害、昨年10月の台風19号による東京・神奈川を流れる多摩川、福島県の阿武隈川でも支流の氾濫で死者が出た。

 頻発する被害に対して、治水ダムや堤防などによる対策は容易ではないという。磯望西南学院大名誉教授(自然地理学)は「周辺の山は傾斜が急で地滑りが起きやすい地質。ダムに大量の土砂が流れ込むと水があふれかねない」と指摘。鉄筋コンクリート建てのビルなど、安全で避難しやすい建物を集落ごとに造ることを提案する。

 二瓶泰雄東京理科大教授(河川工学)も「堤防を高くすれば多くの水をためられるが、水が堤防を越えたときの危険も大きくなる」と話す。

 地球温暖化の影響で「数十年に一度の大雨」が頻繁に発生するようになっている。梅雨や台風時の降水量が従来の想定を簡単に超え、これまでの防災の常識が通用しなくなりつつある。氾濫リスクが高い地域の利用規制も含め、新たな対策が求められている。

 ▽球磨川 熊本県水上村の源流から人吉盆地、八代平野を経て八代海に注ぐ九州屈指の1級河川。国土交通省によると、延長115キロ、流域面積1880平方キロ。源流や中流域のほとんどは狭い地形で、観光のシンボルとして「舟下り」が有名。流域は河川水を利用した肥沃(ひよく)な穀倉地帯だが、洪水が起こると被害が大きくなるため「暴れ川」との異名がある。国は1966年、球磨川水系に川辺川ダムの建設計画を発表。反対運動や民主党の政権交代の影響などで09年に計画を中止した。

続きを表示

「三浦春馬」特集記事

「ジャニーズ」特集記事

2020年7月7日のニュース