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史上最も安全安心な五輪へ 組織委警備局 最新機器そろえる 顔認証300台 30万人超完全チェック

[ 2020年2月17日 09:30 ]

 新型コロナウイルスの感染拡大が進む中、2020東京五輪・パラリンピック組織委員会は大会の中止・延期はせず、予定通り開催する方針を明言した。安全で安心な大会運営は、日本の威信を懸けての至上命令。感染症対策はもちろん、テロ対策、事件・事故の防止を完遂すべく奮闘努力を続けているのが組織委の警備局の面々だ。最新機器を駆使したセキュリティー態勢で、史上最も安全な五輪開催を目指す。 (石川 高伴)

 組織委では新型コロナウイルスの問題を受けての対策本部を今月4日に立ち上げた。その下で政府や東京都との連携を密にしながら対応するのが総務局のメディカル担当。だが、各五輪会場のセキュリティーを担当する警備局にとっては管轄外で済ますわけにはいかない。

 警備局警備部の永井幹久警備総合調整担当部長は「これだけ物と人が動く時代。感染症対策は大会の安全安心のためには極めて重要な対策の一つであることは間違いない。警備局として関心を持っています」と話した。五輪本番に向けた警備の準備で多忙を極める中、感染症対策にも注意を傾けている。

 感染症対策という課題が湧き上がったわけだが、そもそも東京五輪のセキュリティー態勢も課題だらけの状況からのスタートだった。一番のネックは、43会場が広範なエリアに分散していること。近年の大会は五輪パークというエリアに競技会場を集中させており、平昌冬季五輪が2つのエリア、リオ五輪は4エリア、ロンドン五輪にいたっては1つのパークに競技会場と選手村を置いた。

 五輪パークの利点はセキュリティーの簡略化が可能になることだ。パークの入り口で手荷物検査を済ませてしまえば、各会場への出入りでセキュリティーチェックをする必要がなくなる。必然的に人員と予算を削減できるわけだ。だが、東京大会では43会場全ての入場口で手荷物検査をしなければならない。その負担を軽減するために出した答えが、最新機器の導入だった。

 30万人超の選手や関係者のセキュリティーチェックには五輪史上初めて全会場に計約300台の顔認証システムを設置する。NECが開発した人工知能(AI)を採用したシステムで、認識率は99・7%、照合スピードはわずか0・3秒という優れものだ。顔写真を登録していない一般来場者は一人一人スクリーニングをすることになるが、こちらには金属探知機2000台、エックス線検査機1000台のほか、駐車場にも通過しただけで車の下に隠された爆弾などの危険物を発見できる車両下部検査装置を約150台設置する。

 入場後も約8000台の防犯カメラで会場の隅から隅までを警戒。映像は各会場内にある会場警備本部でチェックし、さらに全会場の映像が都内に設置する大会警備本部にも送られる。無数の画面を肉眼でチェックするには限界があるため、人の動きをセンサーが感知した映像が見やすい画面に優先的に映し出されるシステムも取り入れた。警備の予算は880億円で、組織委が動員する民間警備員は軽く1万人を超える膨大な人数になる。永井部長は「警備員の質のボトムラインは一定以上を確保しないといけない」と、eラーニングの教材などを使って警備員教育を徹底していく方針を明かした。

 警備局では、2月から各会場ごとのオペレーション構築へとシフトを切り替えたばかり。永井部長は「今は総論から各論へのフェーズ。本番までの5カ月で他の大規模イベントの事例を参考にしながら対策を進めていきたい」と気を引き締める。今後は持ち込み禁止物品の周知など、一般来場者への情報提供や、会場入り口で長蛇の列ができた場合の暑さ対策もよりブラッシュアップしていきたい意向だ。お金も人も、いくらあっても足りないセキュリティー対策。警察、自衛隊、海上保安庁とも連携して、世界一安全な五輪とするべく、警備局の挑戦は続く。

 【入場者の検査レーン、アサガオ鉢で仕切り】大会組織委員会は入場口でのセキュリティーチェックの一環として「フラワーレーンプロジェクト」を展開する。手荷物検査を待つ入場者のレーンの仕切りをアサガオの鉢植えで構成するもので、各会場周辺の国公私立の小学校、義務教育学校、特別支援学校にアサガオの鉢植えを栽培してもらい、五輪、パラリンピックで合わせて約4万鉢を調達する。組織委の担当者は「暑さ対策というわけではないが、ちょっとした清涼感を感じてもらえれば」と効果に期待を寄せていた。

 【サイバー対策も強化】会場警備と並んで重要となっているのがサイバーセキュリティー対策だ。サイバー攻撃対処部がテクノロジー局と協力しながら、政府機関である内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)と緊密に連携をとって対応していくが、その人員数や具体的な対処法などは極秘扱いとなっている。永井部長は「ある意味、いたちごっこのような状態になっている。入り込まれてもコアな情報は守る…発生してからどう対応するかの訓練もやっています」と話した。

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2020年2月17日のニュース