“三陸鉄道聖火リレー”本番2日前復旧予定 運行区間いまだ6割も「復興五輪」へ全力

[ 2020年1月20日 05:30 ]

台風19号による豪雨の直後線路下の土がえぐられ、線路が宙づりとなった三陸鉄道(織笠―岩手船越間)
Photo By スポニチ

 「聖火リレー」が始まる直前の3月22日、東日本大震災の被災地・岩手県で、JR東日本と三陸鉄道による“鉄道版聖火リレー”が行われる。「復興五輪」の象徴として、聖火リレーとは別に被災地を聖火が巡る催しの一環。三陸鉄道は、津波被害を乗り越えた沿岸部で聖火を運ぶが、昨年10月の台風19号により各地で線路が寸断される大ピンチ。復旧作業は急ピッチで進むが、ギリギリの戦いが続けられている。

 三陸鉄道は台風19号による土砂崩れなどが77カ所で発生。一時は全線163キロの7割が不通となった。中でも復旧に手間取っているのが山田町の路盤流出で、織笠―岩手船越間で盛り土がごっそり流され、幅約10メートルにわたって分断。線路が宙づりで残された。

 三陸鉄道旅客営業部の冨手淳副部長(58)によると「近くを流れる細い水路が台風の激しい雨で激流となり、線路の下の土を流し去った」という。土を盛り直し、バラスト(砕石)と線路を敷く作業は、3月半ばまでかかる見込みだ。

 沿線住民の“生活の足”となれぬもどかしさに加え、五輪の聖火を運ぶ大役が間近に迫ったことが三鉄マンの焦りに拍車をかける。

 3月26日、福島県のJヴィレッジから聖火リレーが始まる直前の同22日、岩手県では三陸鉄道の宮古―釜石間(55・4キロ)と、JR釜石線の釜石―花巻間(90・2キロ)で、聖火を乗せた列車が走る。

 大会組織委員会などによると、聖火はランタンに入れて客車内に展示。駅では停車時間を長めにとり、利用客らに披露する計画だ。三陸鉄道で聖火関連を担当する旅客営業部の橋上和司部長(55)は「被災地岩手で可能な限り多くの人に見てもらおうと、客車以外の場所に展示する計画もあるが、詳細は検討中」と説明した。

 招致段階から掲げられてきた「復興五輪」を象徴するイベント。被災地に寄り添い、復興した東北の姿を国内外に示す狙いだ。

 ただ、台風被害から復旧したのは三鉄全線の約6割。聖火が走る区間では津軽石―陸中山田が今月16日に開通したが、残る陸中山田―釜石は3月20日に再開の予定。イベント2日前という綱渡りだ。

 三陸鉄道は昨年3月、震災の津波被害で不通となったJR山田線の一部を譲り受けて「三陸鉄道リアス線」として再出発したばかり。行政と民間企業が共同出資する第三セクター方式では「日本最長の鉄道」として地元住民の期待や観光客の注目を集めただけに、冨手副部長は「今年度は久しぶりの黒字が見込まれていた。震災の次は台風。16年の台風10号の被害もひどかった。なぜこんなに災害が続くのか」と肩を落とす。

 被災地には「復興五輪」の掛け声に違和感を覚える人も多い。山田町で商店を営む女性(80)は「五輪で岩手の景気が良くなるわけじゃない」と冷ややかな目を向けた。冨手副部長も「五輪開催が決まった頃から“被災地はそれどころじゃない”との声は多かった」と振り返る。それでも、五輪イヤーに入ったここ数週間で空気の変化を感じている。三鉄には「聖火と一緒に電車に乗れるのか」という問い合わせが増えているという。

 今も不通区間にある大槌駅構内でラーメン店「麺匠トキシラズ」を営む菊池晃総さん(40)は「何度も災害があって大変だけど、多くの人が来て地元が盛り上がる催しはうれしい。自分も聖火を見たい」と期待する。

 震災から9年。橋上部長は「鉄道がこういう形で役に立ち、沿線住民の方に少しでも元気になってもらえればうれしい。台風被害は甚大でしたが、津波に比べれば、まだ大勢の人が生きている。何とかできるという気持ちもあります」と力強く語った。

 ▽三陸鉄道 1981年設立。84年に北リアス線(久慈―宮古)と南リアス線(釜石―盛)が開通。2011年の東日本大震災では、南北で317カ所に被害を受け、全線不通となった。震災5日後の3月16日には久慈―陸中野田駅で運転を再開、13年にNHK連続テレビ小説「あまちゃん」にも登場。復興のシンボルとなった。14年、南北ともに全線復旧。昨年3月にJR山田線の一部が移管され「三陸鉄道リアス線」が開通。

 《聖火3・20に宮城到着》聖火は3月12日にギリシャの古代オリンピア広場で太陽光から採火され、20日に空路で宮城県の航空自衛隊松島基地に到着する。同県石巻市「石巻南浜津波復興祈念公園」に展示後、21日は仙台駅へ。22日は岩手県の三陸鉄道、JR釜石線などで展示され、釜石線ではSL銀河に乗せられる。23日は同県大船渡市の「キャッセン大船渡」、24~26日は福島県の福島市、いわき市を回ってJヴィレッジに到着する。東北での一連のイベントは「復興の火」と名付けられている。

 《「こたつ列車」今年もやります》三陸鉄道では、16日に開通した宮古―陸中山田間で、2月に「プレミアムこたつ列車」を運行する。車両内でこたつに入り、食事や活ホタテむき体験などが楽しめる人気の列車。
 宮古発は、新名物「瓶ドン」(税込み1500円)か「海鮮弁当」(同1300円)の予約ができる。瓶ドンは、牛乳瓶に詰めたウニやイクラなどの海鮮を、自分で丼にぶっかけて食べる新しいスタイルの海鮮丼。
 陸中山田発は、活ホタテむき体験ができる。冨手副部長は「おかげさまで好評なので、区間は短くなるけど、今年も楽しんでいただければ」と話している。詳細は三陸鉄道のホームページで。
 ▼運転日 2月2・8・9・11・15・16・22・23・24日の9日間
 ▼出発時刻 宮古発12時15分、陸中山田発13時25分
 ▼料金 運賃(780円)と座席指定料金(300円)
 ▼予約 電話番号0193(62)7000、午前9時~午後5時、料理や体験の予約は前日午後1時まで。

続きを表示

この記事のフォト

「薬物問題」特集記事

「ジャニーズ」特集記事

2020年1月20日のニュース