ラグビー日本代表の“歴史的ブレザー”見つかる!「フェアプレー精神」の象徴 初代代表監督の長女が保管

[ 2019年10月13日 05:30 ]

ラグビーW杯1次リーグA組   日本―スコットランド ( 2019年10月13日    日産ス )

香山蕃さんの長女・藤沢由紀子さんが保管していた1930年の日本代表初海外遠征でカナダチームから贈られたブレザー。フェアプレーの象徴だ(撮影・会津 智海)
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 日本中が注目するラグビーW杯スコットランド戦がきょう13日に予定される中、日本ラグビーの歴史的遺産が見つかった。1930年(昭5)の日本代表初の海外遠征時に相手のカナダチームから贈られたブレザー。初代監督の故香山蕃(かやま・しげる)氏の遺族が保管していた。東洋人で初の殿堂入りをしている世界的レジェンド、坂田好弘氏(77)は「日本のフェアプレー精神を象徴する原点のブレザーだ」と90年の時を超えてつながった“桜の誇り”のパスに驚いている。

 ブレザーを保管していたのは、日本代表の初代監督で日本ラグビーの育ての親といわれる香山蕃氏の長女、藤沢由紀子さん(76)。

 香山氏は1940年の自著「ラグビー・フットボール」が戦前のラグビー教科書として愛読され、戦後の47年には東京ラグビー場(現秩父宮ラグビー場)の建設に尽力。「スポーツの宮様」として親しまれた秩父宮から「蕃(ばん)ちゃんといえばラグビー、ラグビーといえば蕃ちゃん」と称されたほど。

 紺色ブレザーの胸のエンブレムには「TOUR 1930」の文字。90年前とは思えないほど保存状態が良く「父がとても大切にしていたものですから。スポーツの目標は功名心ではなく、健康を保ち、内外に良き友を得ること。それを象徴するブレザーだと常々言っておりました」。

 初めて日本代表が結成された1930年。カナダ遠征が最初の試合で6勝1分けの成績を残したが、第6戦のブリティッシュ・コロンビア州連合チームが初のテストマッチ認定試合となった。
 60~70年代に日本代表のウイング(WTB)として活躍し「世界のサカタ」と称された坂田好弘氏は「この第6戦は日本代表の歴史的一歩であったと同時に忘れてはならない逸話がある」とブレザーにまつわる秘話を明かした。

 坂田氏によると、試合開始早々、日本代表の選手が1人負傷。当時は補充が許されなかったため14人で戦うことになったが、カナダの監督が交代選手を出すよう要請。香山監督が断ると、カナダ側が選手を14人にしたため結局、補充選手を出場させて戦い3―3の引き分けになった。それまでの計5戦のフェアプレーが、当時のルールを破ってまでのベストゲームを生み、遠征終了時にカナダ側から友情の証として贈られたのがブレザーだったのである。

 試合が終われば握手し、称え合い、友情を育む。そんなラグビースピリットに感銘を受けた香山氏は著書「ラグビー・フットボール」で何よりその精神性を説いた。試合終了を告げるルール用語だった「ノーサイド」を、ラグビースピリットを表す言葉として定着させた日本ラグビー独自の文化は、香山氏によって育まれた。今回のW杯でニュージーランド代表ら世界各国の選手が試合後に敵味方一緒になって客席にお辞儀する姿は、香山氏が蒔(ま)いた種が花開いたことを象徴する光景だろう。

 今日の大一番を前に、由紀子さんは「日本でW杯が開催される日が来ることも、日本代表の快進撃も父にとっては夢のまた夢だったでしょう」。坂田氏も「今の日本代表は香山さんが育てた“正々堂々”のフェアプレーの精神がよみがえっている。だから強いんだ」と力を込めた。

 ◆香山蕃(かやま・しげる)1894年(明27)2月9日生まれ、京都市出身。京都一中でラグビー部を創立。三高を経て1921年(大10)東大にラグビー部創設。24年の英国留学で本場のラグビーを学び、帰国後に日本ラグビー蹴球協会(現日本ラグビーフットボール協会)理事に就任し、京大を指導。27年に早大を破り全国優勝した。30年に日本代表初代監督就任。戦後、東京ラグビー場を建設した際には自身の戦災火災保険金を全額投じるなど資金集めに奔走。56年、日本ラグビー協会第3代会長に就任。69年死去。

 《世界への思い込め「満開」ではなかったエンブレム》日本代表の赤白ジャージーの左胸に輝く桜のエンブレム。坂田氏によると、これを選手と考案したのが香山氏で、当時のデザインは、つぼみ、五分咲き、満開の3種類。「ラグビーの母国・英国と対戦できるほど力をつけたら、つぼみを開かせよう」との思いが込められていた。現在と同じ「全て満開」になったのは1952年、英国の名門オックスフォード大が来日した時。由紀子さんの自宅には、当時皇太子だった現在の上皇さまが香山氏と英国メンバーを迎えられた時の歴史的写真もあった。

 《「桜」美しく散れ》日本代表初の海外遠征は12日間の船旅。坂田氏によると、香山氏は日誌に「カナダ上陸前夜」と題し、胸のエンブレムを「桜」にした意味を書き残している。「ユニホームの胸を飾る桜は何を語るか、正々堂々と戦えということである。敗れる場合には美しく敗れろということである。武士の魂を象徴する桜は美しく咲く花にあるのではなく、美しく散るところにあることを知らなければならない」。坂田氏は今の代表のタックルに「香山さんが桜に込めた思いを強く強く感じる」という。

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