【イマドキの気になる現場】まるでネカフェな「献血ルーム」フラッとオシャレに社会貢献

[ 2019年8月26日 05:30 ]

お洒落な雰囲気で利用者が多い「横浜Leaf献血ルーム」
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 ニュースで災害や病気で苦しむ人の話を耳にすると、自分に何かできることはないかと考える人は多い。健康な人ができる社会貢献の一つに「献血」がある。全国約140カ所ある献血ルームは近年、献血者が気持ちよく過ごせる工夫を凝らした場所が増えている。中でもトップクラスの年間4万人以上が訪れる「横浜Leaf献血ルーム」を取材した。

 鉄道6社が乗り入れる巨大ターミナル駅、横浜駅に直結するビルの14階。エレベーターを降りると、正面には木目調が心地よい、オアシスのような空間があった。

 10人ほどがドリンクを飲みながら、本を読んでいる。ゆったりとしたカフェか漫画喫茶のような雰囲気。採血室は受付の奥にあるため、一見したところではここが献血をする場所とは分からない。

 横浜Leaf献血ルームは横浜駅3カ所目の施設として、2015年1月に開所。平日で100人超、週末には150~160人ほどの提供者が訪れる。

 最大の特色は、1000冊以上の書籍や雑誌、漫画が並ぶブックコーナー。ルーム長の中山明夫さん(58)は「若者が集まる場所というコンセプトで、ブックカフェ風という形にした。待ち時間や献血後の休憩時間にゆっくりしてもらいたい」と説明する。医療入門書、料理レシピ、ビジネス書、人気コミックス、アイドル本までジャンルは硬軟さまざま。チョイスは図書専門家からアドバイスを受けるほか、意見箱を置いて献血者から希望も募っている。

 飲み物は無料で、挽(ひ)きたての本格的コーヒーマシンが魅力。菓子や高級アイスクリーム「ハーゲンダッツ」の無料プレゼントまであり、学生に人気が高い。定期的に手相やタロット占いなど12種類のイベントを開催。この日は似顔絵サービスを実施していた。

 Wi―Fi設備やコンセントも完備。パソコンを持ち込み仕事をこなす人もいる。あまりに快適なため、長居する人もいるという。中山さんは「周りの方に迷惑をかけなければ」と苦笑いする。

 狙いは10、20代の献血者の拡大にある。「全国的に10代の血液提供者が減っている」と中山さん。2018年度の16~29歳の延べ献血者数は10年前から32%減り(人口は12%減)100万人を切った。そこで管轄の神奈川県赤十字血液センターは、若者ファンの多いアニメ・鉄道業界との関係を深めた。書き下ろしイラストのプレゼントや、鉄道の開業周年イベントとコラボ企画を実施。9月にも新たなキャンペーンを予定している。

 献血の対象年齢は全血献血、成分献血などの種別により16~18歳から69歳まで。旅行などで各地の献血ルームを回り「全国制覇」を目指したり、中には通算100回を軽く超える猛者もいる。

 横浜市の書道講師、大場修さん(69)は70歳の誕生日を前に、この日が人生最後の献血だった。「このくらいのことでお役に立てるなら。健康でないとできないから、続けられたのはありがたい」と卒業に感慨深げ。20代で献血を始め、カードに記録された通算回数は354回という大ベテランだ。

 利用していた近所の献血ルームが閉所となり、同時期にオープンした横浜Leafの常連になった。「昔は景品が多くて、Tシャツとか自宅にたまっていた(笑い)。ここは来たくなる雰囲気がある。週刊誌を読んだり、お茶を飲んでリラックスできた」と良さを語る。

 全国の献血量は、社会的な出来事にも左右される。今年2月に競泳の池江璃花子(19)が白血病を公表し、献血ルームで登録できる骨髄バンクが報道された影響も大きかったという。ただ提供者が一時的に増え過ぎても、対応しきれない場合もある。

 「地震など有事の際にも、ご協力が偏りやすい。献血は継続的に必要なもので、そこが難しい」と中山さん。興味を持った人をいかにつなぎ留め、リピーターになってもらうかが、全国の献血ルームに共通する最大のテーマ。カフェに入る感覚で献血。横浜Leafは、ふらっと立ち寄りたくなる空間だ。

 《個性的ルーム増加》個性的な献血ルームは少しずつ増えている。東京・秋葉原の「akiba:F献血ルーム」は、漫画の蔵書が全国随一。フィギュアなどサブカルチャーのグッズ展示スペースが目を引く。東京スカイツリータウン・ソラマチにある「献血ルームfeel」は、白を基調とする落ち着いた内装が特色。未来をテーマに2年後の自分や大切な人に手紙を送る企画を実施している。

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