【イマドキの気になる現場】消えゆく珍遺産「提灯殺しのガード」…通るなら今でしょ!?

[ 2019年8月12日 05:30 ]

天井ギリギリの高さを通り抜けるタクシー(撮影・岸 良祐)
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 東京のJR山手線の品川―田町駅間に“提灯(ちょうちん)殺しのガード”と呼ばれる場所がある。最も低いところで高さが1・66メートルしかなく、タクシーの屋根に付いた社名入りの表示灯、通称「提灯」が当たって壊れることからこの名が付いた。この“東京の珍名所”は周辺の再開発に伴い10月にも姿を消す。その前に一度通っておきたいと足を運んだ。 

 国道15号でタクシーを止め“提灯殺しのガード”の正式名称「“高輪橋架道橋”をくぐって品川駅に行ってください」と告げる。しばらく走ってタクシーは左折。目の前に、とても車が通れるとは思えないガードが現れた。スピードを緩めるタクシー。車内で首をすくめること数十秒。ガードを出たとき「ホッ」と安堵(あんど)のため息が出た。

 「最初に通った時は車に乗っていても自分の頭が擦るんじゃないかと思って、私も首を縮めました」

 10年間タクシーの運転手をしている50代の男性は苦笑い。「最近のタクシーは車高が高い車両もある。通れない車種もあると聞いています」と続けた。

 高輪橋架道橋は港区の高輪地区と港南地区を東西に結ぶ長さ約230メートルのガード。最も低いところで地面から天井まで1・66メートル。危険で不便だが、意外にもひっきりなしに車や自転車、歩行者が通る。交通量は多い。その理由は立地にある。ここを通らずに高輪地区から港南地区に向かう場合は、北に約1キロ離れた道まで迂回(うかい)する必要がある。徒歩だとここを抜ける場合に比べ20分も余計にかかる。タクシーは料金がかさむ。前出の運転手によると「高輪橋架道橋を通ってくださいというお客さんも多い」という。

 今度は徒歩。身長1メートル75の記者は、前かがみにならないと歩けない。上を山手線や新幹線がひっきりなしに通り「ゴォォ」と爆音のシャワーだ。天井にはタクシーの提灯などが当たったと思われる無数の傷。“提灯殺しのガード”の異名が付いたのも納得だった。

 なぜ、ここまで低くなったのか。港区芝浦港南地区総合支所まちづくり課によると、高輪橋架道橋は1872年(明5)には新橋と横浜の間に鉄道が開通した際に、芝浦地区と港南地区を結ぶ排水路として誕生。大正時代に水路の半分が人が通れるように改修され、その後、現在のように歩行者と車両が通れる形になった。その際、路面を掘り下げて十分な高さにする案もあったが、地下に水道管が埋め込まれていたため実現しなかったという。

 1世紀近く親しまれてきたが、早ければ10月にも閉鎖されることが決まった。山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」建設に伴う周辺地区の再開発の影響で、車などが通れる高さと幅を確保したガードに生まれ変わるという。付近にはホテルや商業施設、病院などが立ち並ぶ予定だ。

 「もうすぐ姿を消すと聞いて、少し寂しさを感じるね」とタクシー運転手。廃止される前に、と訪れる人も増えている。明治、大正、昭和、平成、そして令和と、大きく動いた時代を見てきたガード。安全で便利になるのは利用者には吉報だが、“東京の遺産”として残ってほしい場所ではある。

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