直木賞候補作 「和牛」好き作者が生む“平場”の恋 

[ 2019年7月17日 05:00 ]

直木賞候補になっている朝倉かすみ氏
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 50歳の男女の恋愛を描いた小説「平場の月」(光文社)が第161回直木賞(選考会は17日)の候補になっている。作者は朝倉かすみ氏(58)。吉川英治文学新人賞を受賞した「田村はまだか」など、独特な文体と深い観察眼による数々の朝倉作品にクセになる読者が続出。今回の候補作「平場の月」はどこにでもいそうな、つつましく暮らす、まさに“平場”の50歳の男女の悲恋が静かに胸に迫ってくる小説だ。

 朝倉氏は40代でデビューした遅咲きの作家。短大を卒業後、アルバイトで生活しているうちに読書にはまり、文章教室に通うようになって作家を目指した。趣味はお笑いを見ること。
 「見始めるとずっと見てしまうから」と自宅にテレビを置いていないため、漫才の日本一決定戦「M―1グランプリ」の当日はわざわざ友人の家に行き、敗者復活戦からテレビの前に座り「コンビ名とネタの内容をメモりながら見ている」というほどだ。
 お気に入りの漫才コンビは「和牛」。「いろんなコンビがいるけれど“和牛です”ってあいさつする時のたたずまいが一際きれい」という独特の視点がある。

 「和牛」をはじめとしたさまざまなお笑いのライブにも通い、作家として注目しているのは「比喩」。

 「小説を読むのに比喩がめんどくさいという人がいるけれど、漫才の“例え突っ込み”は比喩。比喩でみんな笑っているじゃんって思う」と語る。

 「例え突っ込み」とはあるものを別のものに例えて突っ込むこと。「それって〇〇みたいやんけ」というような表現で笑わせる。朝倉氏はここに独自の視点を注ぐ。

 「お笑いは、例えの対象との距離が適切なんだと思う。遠すぎたらつらいし、近すぎると面白くない。ちょうどいいところをやって笑わせる。距離感と言葉の選択が勉強になりますね。勉強になるという意味では会話の間も。はしょりのやり方やどう転がしていくのか。お笑いを見ながら考えたりします」

 作品のテンポの良さと、登場人物への独特の距離感はお笑い好きも影響していそうだ。

 「(今後も)ほかに顧みられない人たち、弱い人たちを書いていきたい。“平場”の人たちを貫いていきたい。この人たちを書くために違うところの目から書くのはあるかもしれない」
 お笑いで鍛えられた目線が生む小説。どんな作品が生まれるのか。楽しみな作家がここにいる。

 ◆朝倉かすみ(あさくら・かすみ) 1960年、北海道生まれ。03年「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞、04年「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞。09年「田村はまだか」で吉川英治文学新人賞受賞。直木賞候補作「平場の月」は第32回山本周五郎賞を受賞した。

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