麻生金融担当相へ「責任転嫁」の批判 「老後2000万円不足」問題 報告書“受け取り拒否”で

[ 2019年6月12日 05:30 ]

記者会見する麻生金融相
Photo By 共同

 「95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要」と試算した金融庁金融審議会の報告書に関し、麻生太郎金融担当相は11日、正式な報告書として受け取らない意向を表明した。自ら諮問しておきながら、一方的に受け取りを拒否するのは極めて異例といえる“はしご外し”。参院選を前に火消しに動いたとみられ、永田町では「麻生氏は責任を転嫁した」と批判が上がった。

 麻生氏は閣議後の会見で「著しい不安とか誤解を与えており、政府のこれまでの政策スタンスとも異なっている」と問題の報告書を受け取らない理由を説明した。

 麻生氏は閣議後の会見で「著しい不安とか誤解を与えており、政府のこれまでの政策スタンスとも異なっている」と報告書を受け取らない理由を説明した。報告書が国民の憤りを受けて炎上する中、参院選への影響を警戒する与党内からも批判が噴出。麻生氏も突き放しに動いた。報告書が高齢者の生活実態に対して平均値から生活費の不足を試算していることに「赤字であるという表現は極めて不適切」と指摘。「公的年金制度が崩壊するようなことは全くありませんから(政府の政策とは)全然違う」と述べ、年金不安の沈静化を図った。

 麻生氏は報告書が発表された翌4日に「100歳まで生きる前提で退職金って計算したことはあるか?きちんとしたものを今のうちから考えておかないといかん」と発言。報告書を評価する言い回しだったが、この日はまるでトカゲの尻尾切りのような変わりよう。与党幹部も金融庁批判を展開した。

 政治評論家の有馬晴海氏は「役人が勝手にやったということにして、早急に今回の問題をなかったことにしようとしている」と指摘。世論の反応で麻生氏が態度を変えたとみて「報告書を受け取らないのはおかしいし、政府の対応としてお粗末だ」と厳しい見方を示した。

 その後、菅義偉官房長官も「政府として正式な報告書としては受け取らない」と麻生氏に同調。政治アナリストの伊藤惇夫氏は「有権者は懐具合に敏感。第1次安倍政権時に参院選で惨敗した“消えた年金問題”を想起させることから影響を避けるため一斉に動いたのだろう」と語った。

 「100年安心」とうたわれていた年金に突然突きつけられた「2000万円不足」問題。その数字の根拠と背景、今後の対策について探った。

 (1)「急に2000万円足りないと言われても…」 報告書は男性が65歳以上、女性が60歳以上の夫婦のみの世帯で、毎月の支出が公的年金を中心とする収入を5万5000円上回り「赤字」になると指摘。

 収入が年金を主体に月20万9198円、支出が月約26万4000円と算出した。月々の差額が約5万5000円で、95歳まで30年生きるとして2000万円の不足が生じるとしている。

 総務省の家計調査をベースとしているが、世帯によって年金総額、食料費や住居費などの上下もある。国民には「突然2000万円必要といわれてもどうしたらいいのか」という憤りとともに「ウチはもっと足りないのかもしれない」という不安まで呼んでいる。

 (2)「自宅を売却しろ!?」 金融庁は2000万円を捻出するためのアドバイスも提示。人生の段階を「現役期」「退職期前後」「高齢期」と3段階に分けて具体策を出している。最も強く求めているのは「投資」だ。現役期から少額でも分散投資して自己資金を作ることを推奨。退職前後には「退職金が思ったより少ないかもしれないから事前に情報収集を」と呼び掛けているほか「住宅を売却し、地方に移住する」など、人生の選択に思い切り踏み込んだものもある。報告書の作成メンバーは大学教授、金融機関関係者、弁護士、マスコミ関係者ら20人。議論参加者には市場、投資業関係者が多く、投資市場を活性化させることを目的とする金融庁の“思惑”も見える。

 (3)「高齢者1人を支えるのは1・8人」 年金制度を揺るがしているのは少子高齢化だ。

 日本の人口構成は1965年が高齢者が少なく子供が多い、「富士山型」だったが、徐々にその数が逆転していき、2050年には高齢者が多く、子供が少ない「つぼ型」に推移すると予測されている。

 1960年には1人の高齢者の年金負担を11・2人の現役世代が支えていたが、少子高齢化が進み、2025年には高齢者1人を支えるのは1・8人となり、将来的に公的年金の運用が厳しくなる状況がある。

 さらに公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、今年2月に昨年10~12月期で14兆8039億円の運用損が出たと発表。年金の資産総額は150兆6630億円あり、運用分は約1割で、市場運用の累積は黒字となっているが、今後も運用益が出るとは限らない。

 (4)「対策は家計のスリム化!?」 経済評論家の荻原博子氏は年金が足りない場合の個人の対策は「投資はしない」と言い切る。「投資は経済が右肩上がりのインフレ時にするもの。デフレで米中関係も不安定、8月にトランプ米大統領がなにか発表すると言っている今がその時ではない」とする。

 さらに「金融庁は昨年“窓口で投資した人の46%が損している”のデータを発表している」と指摘。「半分の人が失敗しているのです」と金融庁のアドバイスに真っ向から反対した。

 そこで勧めるのが家計のスリム化。「60歳以上の世帯が月々5万5000円足りないならその分スリム化すればいい。携帯電話を格安スマホにしたり、交際費など削れるところはある。若い世代は月々2万円、ボーナス10万円貯蓄すれば退職まで30年で1000万円は超える」と語った。

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