【イマドキの仕事人】ドローンで家屋を撮影、災害対策に

[ 2019年4月15日 05:30 ]

ドローンを操縦する杉本さん(撮影・岸 良祐)
Photo By スポニチ

 手軽に空撮が楽しめるドローン。最近では宅配便の空輸実験も始まっている。そんなドローンで家屋を撮影し、災害で被害が出たときの罹災(りさい)証明発行に役立てようとしている建築業の男性がいる。「災害から日本を守る」という思いを胸に、日夜ドローンを飛ばしている。

 埼玉県新座市の閑静な住宅街にある一軒家。杉本裕典(36)は北風が強く吹く中、慎重にドローンを離陸させた。電線に注意しながら家の屋根を中心に撮影。約5分後、家屋の状態を記録し終えたドローンは無事に着陸。「万が一災害が起きてしまった際にも記録を残しておけば、罹災証明を受けられる可能性が大いに高まる。それが災害への備えになる」と話した。

 撮影した映像を、依頼主の高橋圭子さん(36)と確認。パソコンの画面を見せながら異常がないことを報告した。高橋さんは「こんなに細部まで写るんですね。これからも定期的に頼みたい」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。5人の子供がおり「長く住みたい家なので、昨年の台風などで自宅の雨どいや屋根が被災していないか心配でした」という。大がかりな足場を組んで点検してもらうべきかどうか悩んでいたところ、このドローンのサービスを知ったという。

 杉本がドローンでの家屋の撮影を考えたのは、2011年の東日本大震災がきっかけだった。福島県内でがれきの撤去作業を行っていた時、ある被災者の声を耳にした。家屋が大きく損壊したが地震による被害だったか証明できないため、罹災証明がなかなかおりず、保険金も支払われない現状が続いていた。「震災前の家の写真さえ撮っておけば」と悔やんでいた。当時、ドローンが普及しだし、メディアでも度々扱われていた。ドローンなら手軽に家屋の点検・記録ができると思いつきドローンパイロットの集団、一般社団法人「JAPAN47」を設立。自身は代表理事に就いた。

 杉本は静岡県出身。若い頃は“ヤンチャ”で、暴走族の先輩のボンタン姿に憧れて、とび職の世界に飛び込んだ。現場で経験を積み、2006年にはひとり親方の個人事業主として独立。10年には建設会社を設立し、社員50人以上を束ねるまでになった。長年、建築の現場で汗を流してきた経験から、家屋の傷みやすい部分などを的確に指摘。ドローン撮影をセットにした火災保険のコンサル事業も手がけるなど、ドローンを軸に活動範囲を広げている。

 事業の根幹にあるのは、常に「災害対策」だ。「JAPAN47」の名前には、活動拠点を全都道府県に置くことで「日本を守る」という思いが込められている。現在9つの地方自治体と災害協定を結んでいる。津波などが起きた際にドローンを使って救助対象者を発見し、浮輪を上空から投下する実証実験にも取り組む。「道路が寸断されたり、人間が行けない場所にもドローンなら行ける。建築業で培ったドローン技術を災害現場で生かせたら、こんなにうれしいことはない」と前向きだ。

 ただ、各自治体の災害対策が進まない現状には歯がゆい思いをしている。「被災してからではなく、今できることを考えて災害対策を立てていただきたい」と話す。今後も地方自治体とさらなる連携を目指している。

 「被害に遭われた方が、いち早く安心できるようにしていきたい」と強調。家屋撮影は第一歩。災害発生時、ドローンで得た情報をどのように提供するのか、そのインフラにまで思いを巡らせる。ドローンによる災害対策は、まだ離陸したばかりだ。
 =敬称略=

 《30万円から赤外線カメラで詳細撮影も可能》JAPAN47による点検サービスの費用は3万円(戸建て等)から。点検後に修繕を行った場合には無料になるという。撮影した映像は、後日データでの受信もできる。マンションなどの大型構造物にも対応。赤外線カメラを搭載したドローンで詳細に撮影することも可能という。こちらは30万円から。

続きを表示

この記事のフォト

「大坂なおみ」特集記事

「日本代表」特集記事

2019年4月15日のニュース