大槌「風の電話」癒した3万人以上 回線のない黒電話と思い出つづるノート

[ 2019年3月12日 05:30 ]

今も遺族らの心を癒している「風の電話」
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 岩手県大槌町に回線のない1台のダイヤル式黒電話が置いてある。三陸海岸を望む高台にたどり着くと「風の電話」と書かれた白い電話ボックスがポツンと立っている。

 ガーデンデザイナーの佐々木格(いたる)さん(73)が自宅庭園に設置したのは11年4月末。これまで3万人以上の震災遺族らが自身の内面と向き合ってきた。間もなく8年を迎えようとしていた取材当日、津波で娘を失った女性が受話器を取った。喪失感を抱き続けてきたが、初めて「風の電話に行ってみたい」と知人へ相談してやってきたという。

 電話の隣にあるノートには、大切な存在だった人への思いが毎日のようにつづられていく。「夢でいいから話したい」「あなたの子供がどれだけ大きくなったか会って伝えたい」「早く迎えに来てください」――。佐々木さんは「自問自答することで気持ちを整理し、吐き出す。心をつむぎ直す役割につながっています」と語る。

 昨年8月、老朽化していた電話ボックスが約7年半ぶりに新調された。千葉県の建設会社や茨城のボランティア団体に所属する中高生らの手で建てたボックスは、アルミ製になって長持ちするようになった。

 ここ4、5年は震災遺族だけでなく、家族を自死で失った遺族や外国人も増え、役割も広がりつつある。訪れる人はボックスを出るために必ず一歩踏み出すことに変わりはない。その一歩が途切れた糸をつむいだ証。時は流れても、風の電話は静かに人々の心に寄り添い続ける。

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