がん検査新時代 研究者とエンタメ界の雄が異色タッグ

[ 2018年12月21日 05:30 ]

 【激動2018 政治社会(5)】がんの免疫療法の研究で京都大の本庶佑特別教授(76)が今年のノーベル医学生理学賞を受賞した。開発に携わった治療薬「オプジーボ」は免疫細胞のブレーキを解除し、免疫ががん細胞を攻撃する仕組みを利用したもの。夢の薬として注目されているが、ネックは治療費。年間1000万円以上と高額で誰もが受けられる治療ではないのが現実だ。

 一方で手軽に安価でがんの早期発見ができるという新たな検査が注目されている。利用されるのは「虫」だ。

 体長1ミリほどのある種類の線虫が、がん患者の尿に含まれる特有の物質のにおいを好む性質を利用。尿1滴をシャーレに落とし、線虫が寄っていけばがんの可能性があり、離れていけば陰性というもの。精度は約90%と高く、現時点で18種のがんの検知が可能。数千円程度で受診でき、精密検査につなげる初期の「1次スクリーニング検査」として期待される。

 この検査は「線虫」の研究に携わる生物学者で医療ベンチャー「HIROTSUバイオサイエンス」の広津崇亮代表が、がんのにおいを判別する「がん探知犬」から着想を得て考案したもの。検査名「N―NOSE」と名付けられ2020年実用化を目指している。

 そこに、全く異業種である音楽・芸能業界大手のエイベックスが新たな風を吹き込んでいる。1月にがんの検診率向上とN―NOSEの啓発活動を展開する合同会社「エイベックス&ヒロツバイオエンパワー」を設立。同社代表を務めるのは、エイベックスでTRFやAAAなどのマネジメントを手掛けてきた保屋松靖人氏。異業種タッグのきっかけは、保屋松氏の個人的な経験だった。

 「約5年前、息子が12歳で横紋筋肉腫という小児がんにかかった。幸い治療を受けて元気に生活できる状態になったものの、検診でもっと早く分かっていればと強く思ったんです」。がん医療を学ぶ中で広津氏と出会い、がん検診率の向上への思いで意気投合した。

 普及にはエイベックスの強みを生かし、同社所属アーティストの協力を仰ぐ。保屋松氏は「彼らが啓発活動し、若者に自分から受けたいという気持ちになってもらう。そこにエンタメが介在する意義がある」と強調する。同時に設立した小児がん患者を支援する一般社団法人「エンパワー・チルドレン」では、チャリティーコンサートや施設訪問などの活動を展開する予定だ。

 いずれは、この検査を「小中学校の健康診断に組み込み、自動的に受けられるようにしたい」と、保屋松氏。「将来的には優れた研究者をマネジメントし、研究の実用化を支援する仕組みもつくりたい」。エンタメ界の雄が、人の命を救う研究のサポートを目指す。

 本庶氏は、ノーベル賞授賞式前の記念講演で「いつか、がんを制御できるようになるだろう」と展望を語った。広津氏が「がん研究が注目されて、この検査にも追い風になる」と話す通り、本庶氏の快挙は、多くの研究者に勇気と刺激を与えた。広津氏は「がんの早期治療が広がり、インフルエンザくらいの(治せる病気という)感覚になれば」と願っている。 (特別取材班)

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