【イマドキの気になる現場】百合漫画“語り愛”、文壇バー花盛り

[ 2018年11月12日 05:30 ]

東京・新宿の「シアターpoo」で開かれている「百合文壇バー」。店内では、百合漫画やアニメについて約20人の男女が熱く語り合っていた
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 「百合(ゆり)漫画」というジャンルが盛り上がりを見せている。女性同士の愛をテーマにした作品の総称。男性同士の「BL(ボーイズラブ)」に比べればややマイナーだが最近、ぐいぐいとファンを増やしている。マニア向け作品に限らず、あの大ヒット映画「アナと雪の女王」や戦隊ヒーローにも“百合”の要素があるという。そんな“百合好き”が集まる都内のバーを訪ねた。

 JR新宿駅東南口から目と鼻の先、小さなビルにある小劇場「シアターpoo」では、毎週月曜の夜に百合作品を語り合う催しが開かれている。その名も「百合文壇バー」。扉を開けると薄暗い室内にテーブルが並び、20人ほどの男女がグラスを片手に座っていた。男性が多めの印象だ。

 この日は参加者が“推し作品”を語る「レコメンド回」。各自が用意した漫画のコピーや解説をまとめたプレゼン資料が席に配布され、会が始まった。マイクを握った男性が「弊誌はウルトラマンや仮面ライダーなどヒーローを扱っています。百合要素のあるダークヒロインものを企画しました」と語り、1冊のコミックを掲げた。男性は漫画誌「月刊ヒーローズ」を発行する株式会社ヒーローズ営業推進部の古谷健一(31)。同誌の掲載作「ヒメノスピア」をプレゼンし始めた。

 いじめられっ子の少女が特殊能力を得て女子高の“女王”となり、国家権力と戦う異色の作品。かつてのいじめっ子相手に“主従関係”を築いていく心理描写がキュンとくる。

 「国家との戦いに百合を絡めるとは…」と驚く記者に、隣に座るフリーライターの女性(23)が「今や戦隊ヒーロードラマや、あの人気漫画だって“百合が入った”と話題ですよ」と教えてくれた。子供番組や有名漫画誌にも“百合要素”があるとの見解に衝撃を受けた。

 百合好きによると、大ヒット映画「アナと雪の女王」、スタジオジブリの「思い出のマーニー」も百合作品だという。「ヒロイン2人がお互いを思い、離れ、再び思い合う関係に萌えた」と話す人もいる。

 この日の参加者の話を聞くと「百合」とは必ずしも「女性同士の恋愛」ということではない。恋愛というより、女性同士がお互いを強く思い合う関係を意味しているようだ。ある参加者は「女同士は、友情を超え、愛情の手前の部分に“言葉にできない感情”がある。これが、もどかしく切ない」と話した。男女のように分かりやすい形では結ばれない。百合好きはそこに純愛を読み取っているようにも見えた。

 百合文壇バーの仕掛け人は、BL漫画を数多く手掛ける出版社のK(32)。周囲の百合好きの要望に応え、今年1月から会をスタートさせた。これまで「バトルと百合」「食事シーンと百合」などをテーマに選んできた。この日はKを含む出版社3社が作品をプレゼン。Kは、大きな需要がある分野だと確信している。

 「文壇バー」というと、文豪と編集者が高尚な議論を交わした昭和の高級サロン的なイメージがある。だが、ここは題材が漫画やアニメのためか、そんな近寄り難さがない。参加費は無料で、聞いているだけでもいい。この日は飲食はチャージ料込みで、1000円札数枚で済んだ。

 興味深い分析もあった。百合人気の背景として、経済的にも政治的にも行き詰まった日本社会の閉塞感を挙げた参加者がいたのだ。「創作の世界では“ここではないどこか”を目指す時代はとうに終わり、2010年代に入り身の回りの人たちとの関係を再構築することにテーマが移っている」という。その流れの中で、Kは「百合は、女同士の関係を通して幅広い表現ができるジャンル」と期待。このバーから、新たなカルチャーの流れが花開いていくかもしれない。=敬称略=

 ≪目覚めのきっかけは「セーラームーン」≫百合ファンの多くが“目覚め”のきっかけに挙げたのは90年代に漫画、アニメで大ヒットした「美少女戦士セーラームーン」。ウラヌス、ネプチューンの両戦士が恋人同士のように描かれた。書店員の女性(29)は「子供だったし、よく分からなかったけど気になりました」と振り返る。現在の“ブーム”を「昔から潜在需要はあったはず。百合と名が付き、需要に気づいた作り手が仕掛け、今の盛り上がりがあるのでは」と分析。自身も担当店で百合コーナーを任され「4〜5年前は本棚の1列だったけど、今や棚4個を一等地に展開してます」という。

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