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【イマドキの仕事人】20年五輪へ 外国人タクシー運転手疾走

乗客との「一期一会が楽しい」と話すエジプト人のタクシー乗務員セリムさん
Photo By スポニチ

 コンビニや飲食店などで働く外国人の姿を多く見かけるようになった。人手不足が深刻化する中、タクシー業界でも外国人ドライバーを採用する動きが出てきている。とはいえ2種免許取得は日本語の学科試験クリアが必要。そんな高い壁を乗り越え、都内を走る30代のエジプト人男性がいる。その視線は2年後の“おもてなし”に向けられていた

 ある平日の午前8時すぎ。朝のラッシュで混雑する東京都世田谷区内の環状8号線を、大型タクシーが走っていた。「お客さま、車内の温度は大丈夫ですか?」。白い手袋をはめた両手でハンドルを握り、モハッマド・セリム(31)は流ちょうな日本語で後方座席に向かって声をかけた。

 車線変更の際には、後続車にハザードランプを点滅させてあいさつする“日本式マナー”も欠かさない。今月14日まではイスラム教徒にとってラマダン期間。日の出から日没まで飲食できず、眠気覚ましのコーヒーを飲むことができなくても「前日にしっかり寝れば大丈夫。忙しいと時間はあっという間ですから」と笑った。モスクでのお祈りは休憩時間に行っている。

 エジプトに妻と5歳の娘を残し、来日したのは昨年6月末。「いつか日本に行ってみたい」という夢をかなえた。小学生の頃にテレビで見ていたサッカーアニメ「キャプテン翼」が大好きだった。日本に興味を抱き、エジプトの大学で観光分野を学びながら、独学で日本語を勉強した。卒業後はピラミッド観光などで訪れる日本人ツアーの添乗員や通訳などを務めた。そんな時、インターネットで日の丸交通(本社・東京)が外国人タクシー乗務員を募集する求人サイトを見つけた。「観光にも関わる仕事だし、いいなと思った」。アラビア語、英語、日本語に堪能で真面目な性格が買われ、エジプトにいながら即内定を獲得した。だが、外国人が日本でタクシー乗務員になるのは簡単なことではない。必要な2種免許の筆記試験は日本語のみだからだ。

 来日して入社後は一日14時間以上、寝る間も惜しんで勉強の日々。「大変でした。言葉は話せても、書くとか、漢字を読むのは難しい。引っかけ問題には苦労しました」。努力は実り3回目の挑戦で合格。法令、地理試験もクリアした。

 昨年9月にデビューし、現在は主に東京都港区を中心に車を走らせている。乗客の9割は外国人の運転手に驚くという。「驚きすぎて乗らない方もいます。だからドアを開けたら、日本語できちんとあいさつするようにしています」。横柄な態度の客もいるが、「ほとんどの日本人のお客さんは優しいです」と話す。困惑したのは行き先の短縮。「下北沢はシモキタ。二子玉川はニコタマ。ナビに入れても出てこないし、最初は何を言っているのか分からなかった」と苦笑いしながら振り返った。

 目標がある。2020年の東京五輪・パラリンピックだ。「外国人、特にイスラム圏の人も多く来日すると思うのでサポートしたい」。そのため観光タクシーの運転に必要な通訳案内士の資格も取得した。外国人観光客からは、英語でコミュニケーションが取れると喜ばれているという。「日本にきて良かった。タクシーは一期一会。いろんな方に会えて、話が聞ける。楽しいことがいっぱいあります」。

 日本行きを応援してくれた家族が6月中に来日することが決まり、仕事にもますます熱が入る。数ある選択肢の中で日本のタクシーを選んだセリム。外国人だからこそ感じる日本の魅力を、自分なりの“おもてなし”で伝えていきたいと考えている。=敬称略=

 《中国、韓国、ブラジル…外国人乗務員数を20年までに100人に》日の丸交通には、セリムのほかにも中国、韓国、ブラジル、ポーランドなど10カ国、男女23人の外国人乗務員(研修生含む)が在籍している。今後も積極的に採用していく方針で、東京五輪・パラリンピックに向け「100人を目指している」と同社。外国人乗務員は就労人口の減少、インバウンド対策において貴重な人材となっている。営業成績も優秀といい、セリムは営業所内でもトップクラス。「日本人の平均売り上げより数万円多い」(同社)と信頼を寄せている。

[ 2018年6月11日 05:30 ]

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