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【イマドキの仕事人】サメないサメ愛、“ジョーズ”に伝えたい

3000人あまりのギャラリーに囲まれ、メガマウスの公開解剖を行った沼口麻子(撮影:鈴木啓司)
Photo By スポニチ

 いま空前の深海魚ブーム。テレビでは特集番組が組まれ、書店には写真集が並ぶ。そこでは、いわゆる深海魚とともに、深層に棲息するサメも取り上げられている。出没すればビーチが閉鎖になるなど、厄介もの扱いのサメ。そんなサメをこよなく愛し、「シャークジャーナリスト」の肩書で活動する女性がいる。

 「クロヘリメジロザメ」「イタチザメ」「アオザメ」

 毎月都内で開催される「サメ談話会」では“固有名詞”が飛び交う。5月は東京・池袋のビルの一室に11人が集まった。参加者は、路線バスほどの巨体を誇った古代ザメ、メガロドンの歯の化石など持ち寄った“自慢のグッズ”を囲むように座り、語り合う。

 主催者の沼口麻子(38)は話に割り込まず、丁寧に相づちを打つ。「サメ好きの人は話したくてウズウズしてます。思いをはき出す場として、会が機能していればうれしい」とほほ笑んだ。

 国内外の海に潜り、漁港や魚市場にも足を運んでサメを探す。執筆活動やテレビ出演のほか、この談話会のようなサメ関連のイベントを開いている。「ギリギリの生活ですが、サメオンリーで食べてます」と話した。

 「サメ好きが増えている」と実感している。談話会には50人以上が集まることも珍しくない。自身が開設したフェイスブックのグループ「サメ好き集まれ!」は非公開ながら1000人以上が集まる人気ぶりだ。

 背景には近年の深海魚ブームなどがあると分析する。異様な姿の深海ザメに魅了される人が急増し、サメ全般に興味を持つ人が増えているという。16年夏、ホオジロザメの全身標本が展示された「海のハンター展」(東京・国立科学博物館)には、この年の自然科学系展覧会で入場者数2位となる33万人が訪れた。

 幼少の頃から「模写による“自分図鑑”を作るほどだった」という生き物好きで、東海大海洋学部に進学。サメに取りつかれたのは、3年生の時に小笠原諸島・父島で挑戦したダイビングがきっかけだった。「2メートル以上あるシロワニ(サメの一種)を手が触れる距離で見た。その大きさと格好良さ、神々しさから、サメを研究しようと決意した」。研究のために父島に引っ越し、周辺海域に棲息するサメのリストを作成するなど研究に没頭。大学院まで進んだ。

 ただ就職活動では「サメでは食べていけない」と思い知らされた。「サメの研究は漁業的に大きな需要はなく、直接お金にならない。国の援助もわずか」。研究者への道は険しく、諦めざるを得なかった。それでも関わる道を探ったが「サメ駆除や水族館の職員もやりたいこととは違った」。結局サメとは無縁の一般企業に就職。プログラマーとして働き始めた。

 だが会社員生活が水に合わなかったのか、心身のバランスを崩して休職した。サメのことが頭から離れない。「このままじゃ成仏できないと思った。ならばもう一度サメと向き合ってみよう」と決意。フェイスブックで情報発信したり、談話会の他にも“サメ合宿”やツアーなどのイベントを企画したり、研究者とは違う関わりを模索し現在に至る。

 「シャークジャーナリスト」は自身で考えた肩書だ。「たぶん世界で私だけ。いろいろな活動をしていて、適当な言葉がないので」と苦笑い。サメと言えばジョーズ。恐怖の象徴でもある。ブームが起きているいまが好機。沼口の地道な活動が、イメージを変えていくかもしれない。 =敬称略=

 《9割が温厚》沼口は、映画「ジョーズ」に代表される“人食いザメ”のイメージに異を唱える。「昨年、サメに襲われて亡くなった人は世界で5人」。サメが人に噛(か)みつくことがあるのは事実だが、多くはサーフボードにまたがるサーファーを好物のアザラシなどに見間違えたものという。目撃情報があると、すぐにビーチが閉鎖されることも疑問視。今月発売した著書「ほぼ命がけサメ図鑑」(講談社)によると、サメは509種が確認されており「その9割が温厚」という。「サメの正しい情報が広まることを願っている」としている。

[ 2018年5月28日 05:30 ]

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