【コラム】山内雄司

もっとも戦うべきは誰なのか 厳しい戦いに臨む準備が足りない

[ 2016年9月5日 05:30 ]

<日本・UAE>試合中に何度も審判に激しく抗議するハリルホジッチ監督(左)
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 勝負事に絶対はない。格下と目されるチームに苦しまされることは往々にしてある。万全の準備を整えてなお、上手くいかない時も多い。しかし、それを踏まえてもUAE戦の敗北は許されざるものではない。

 本田は言った。「戦術以前に、気合、根性、負けず嫌いなど、大事な部分が足りなかった」

 ピッチに立ったのは、日本のフットボーラーの最高峰に到達した者たちである。どんなに望んでもその地位を手にできない数多の選手たちは、その言葉をどう聞くだろうか。国旗を胸に、ワールドカップに向けた最終決戦の初戦で、戦士としての資格さえ有さない者たちがいたとしたら、それは裏切りにも等しい。

 無論、最終予選独特の緊張感も、ホームの逆プレッシャーもあったかもしれない。でも、本田が言うところの“大事な部分”は、例えプレーが上手くいかなくと も存分に出し切ることができる、いや出し切らなければならないもの。こう言うとすぐに根性論と一蹴されるが、それが勝負事の源であることは選手自身がいちばん分かっているはず。仮に自分にそれが不足していると認識したとしたら、少なくとも代表のユニフォームは返上すべきだ。

 本田は敢えて口にしたのだろうが、これほど聞きたくない言葉はないし、今後を不安にさせるものはない。

 ハリルホジッチ監督は言った。「選手の選択は自分でも疑問に思う」

 コンディションが整わない選手が多かったのは事実なのだろう。辞退の長友や昌子の他、柏木や山口も起用できなくなったのは誤算だったろう。潔く失敗を認めたと言えば聞こえは良いが、選手選考や起用は指揮官の仕事の大きな部分を占める。自らを否定し、送り出した選手を否定する監督を信頼し続けるのは難しい。

 何も彼だけを指した言葉ではない。それでも、大事な試合でいきなり初キャップとなった大島は、大きな十字架を背負うこととなってしまった。コンディションが整わない選手が多いと分かっていながら、まだ周囲との連係浅い大島を起用したのは、いささか冒険が過ぎた。筆者は大島自身は持ち味を発揮しようと奮闘していたと思う。ベテラン勢が彼の良さや甘さをフォロー仕切れなかったところに問題があると感じている。それも含めて指揮官の起用は、筆者も疑問に思わざる を得ない。

 戦術面でも、およそ戦術は感じられなかった。両SBを高くしようとしても、起点とするわけでもなく、それによりCBコンビも連係した 対応はできなかった。攻撃陣も何とかしてくれパスが多く、たまらずサイドに出して、また何とかしてくれクロスばかり。跳ね返ってピンチを招いた際のコース 限定、誰が当たりにいくのかも曖昧なままだった。

 まだ先は長い。十分に取り返すことはできる。しかし、厳しい戦いに臨む準備がまるでできていなかったことに、大いなる危機感を抱く。そして、その危機感は選手や監督だけに向けるべきではない。ブラジルでの惨敗を受けて協会は何をしてきたか。その答えが最終予選の初戦に散々な形となって現れた。

 誤審を提訴するのはいい。だが、まず我が身を振り返ることに全力を注がなければ、取り返すことも厳しくなる。

 もっとも戦うべきは誰なのか。いよいよ明白になった一戦だったとも言える。(山内雄司=スポーツライター)

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