【コラム】山内雄司

リオ五輪代表 チームは間違いなく成長

[ 2016年7月1日 05:30 ]

リオ五輪メンバーを発表する手倉森監督
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 南アフリカには長旅の疲れもあっただろうし、何が何でも勝つというモチベーションも感じられなかった。ラッキーなPKで先制してからというもの、シフトアップしてアクセルを吹かすよりも、むしろシフトダウンして日本に隙を与えてくれた。ホームの日本が完勝といっても、これでブラジルでも活躍してくれるなどと安心するわけにはいかない。あくまでもテストマッチであり、この日の結果は当てにはならない。

 ただ、必要以上に粗を探す必要もないだろう。後半の停滞、その要因となった交代出場選手たちのアピール不足は気になるところではあるが、メンバー入りへの思いが空回りした面もある。メンバーについてはあれこれ言ってももう発表のタイミングであるのでここでは取り上げない。おそらく手倉森監督の中では試合前にほぼ固まっていて、中島や室屋ら負傷上がりの選手のチェックと、残り1ピースを誰にするかという意味合いだったと推測する。サプライズはなく、およそ順当な選考になると考えられる。

 ポジティブな面を挙げていこう。もともとチームワークが良く、それがガツガツとした野性味を欠く物足りなさを感じさせるきらいもあったが、南アフリカ戦では十分なる相互理解と意思の統一が見受けられ、手倉森監督が懇切丁寧に創り上げてきたチームの特長がそこかしこに表れていた。

 前半8分、南アフリカの最終ラインが横パスを繋ぐ。右サイドまで到達した際、すかさず矢島が間合いを詰め、DFが後ろを向いた気を逃さずに突っかけてボールを奪い、フォローした中島が素早く裏をとった浅野にパスを送ったシーンに、チームが目指す戦いの一端が見えた。浅野のシュートはゴール左に外れたが、3人の意図が合致し連動したこのプレーは、ブラジルでもひとつの指針となるはずだ。中島が最前線に入った意味を本人、周囲とも理解していた様子で、奪った後の速さ、裏を突く動きとそれを予期する出し手と受け手のコンビネーションは確実に精度を増している。

 個人的には矢島のパスのタイミングが、コンマ何秒かもしれないが受け手との呼吸を十分に把握したものになった印象を受けた。先制点も矢島のパスで勝負あり。南アフリカDFの緩さも加味しなければならないが、裏への高い意識が勝利を手繰り寄せたといってもよい。浅野の飛び出すタイミングと持ち味のスピード、何よりどのようなプレーが求められているかを体現した姿も逞しかった。大島、野津田もまずまず。しかし、「まずまず」では世界は渡れない。上手さは出しているが、“怖さ”をもっと押し出して欲しい。

 守備陣では室屋が存在の大きさを示した。屈強な南アフリカのアタッカーにも怯まず、素晴らしい攻め上がりから2点目を演出した。また植田は相変わらずの高さ、強さで安定感があった。場面によってはラインを下げ過ぎたし、セットプレーの厳しさもまだまだ不足している。GK櫛引を含め、もっとハッキリしたプレーを心掛けないとワンチャンスでやられる可能性がある。亀川は痛恨のミスを犯してしまったが、メンバー入りを果たしたなら、同じミスは犯さない強さを見せてくれると信じる。

 冒頭でも記したように、このテストマッチで大喜びすることは到底できない。選手たちはブラジルで世界の凄味を知ることになるだろう。だが、チームは間違いなく成長を見せてくれた。決して腰を引くことなく、自分と自分たちのチームの持てる力を余すところなく発揮してくれることを願う。

 あとは短い期間でOA3人を加えたチームをいかに創り上げることができるか。相手によっていかなる用兵と戦い方を選択するのか。特に興梠にどのような役割を与え、周囲にどうマッチングさせるかは非常に興味深い。

 暑い夏になるか。ぜひともそうであってもらいたい。(山内雄司=スポーツライター)

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