【コラム】山内雄司

自分のためにプレーしてほしい リオデジャネイロへのカウントダウン

[ 2016年5月21日 05:30 ]

フランス・トゥーロン市内で初練習を行ったU―23日本代表イレブン
Photo By スポニチ

 リオデジャネイロへのカウントダウンが始まり、いよいよU-23日本代表の闘いも過酷さを増している。

 今週末からのトゥーロン国際大会は、1次リーグでパラグアイ、ポルトガル、ギニア、イングランドと対戦する。地域もタイプも異なり、各国の特徴を鑑みてどのようなプランを立てるか、これまでの強化の有効性や選手の組合せなど、チームとしてシミュレートする格好の場になると同時に、本大会メンバー入りへの熾烈なサバイバルが繰り広げられる。

 もちろん「チームのために」「チームとして」は心にあるはずだが、選手の本音は「何としてでも選ばれたい」「最大限にアピールしたい」となる。中1日で次々と対戦することもあり、すべての試合で起用される保証はない。出場時にインパクトを残したいと考えるのが選手としての性であろう。

 さらにはオーバーエイジ枠がある。ウィークポイントを補い、戦力強化を図るという意図は理解するが、それが自分のポジションと考えて欲しくないと思うのが選手の心情である。「なにくそ、俺がいる!」との存在感を示そうとするはずだ。

 不謹慎な言い方になるが、こうした大きな大会前のサバイバルでは、「チームのため」と「自分のため」の双方が存在するなかで、選手がいかにパフォーマンスするかという見所も増える。

 このふたつはともすると相対するもののように語られることがある。「個人を優先してチームプレーをおろそかにした」とか、「チームプレーに徹するあまり個が物足りなかった」とか。だか、そういうものではないと考える。

 中田英寿はアトランタ五輪の際に次のように語ったことがある。

 「自分のためにプレーします」

 これだけを取り上げて、独善的だのチームをないがしろにする、といった論調で報じられたこともあった。監督にも意見する姿が、当時としては奇異に映ったことも影響しているのかもしれない。

 しかし、彼のプレーは決して独善的なものではなかった。常に周囲に目を配り、献身的に追いかけ身を投げ出した。恐れるな、前から取りに行けばチャンスは生まれる、戦え、自分のプレーを出すんだ!そんなメッセージに満ち溢れていた。それが時に指揮官のプランから外れてしまう要因でもあったように思う。

 彼にとって唯一無二の目的は「どんな相手でも勝つこと」であり、「チームのため」も「自分のため」も手段に過ぎなかった。チームのために自分のプレーを抑えてしまったら勝利から遠ざかる。あくまでも勝つために自分の力を余すところなく見せつけること。「自分のためにプレーします」は、なにもチームのことは二の次、ではなく、チームプレーが重要なのは当たり前のことで、チーム全体が勝つために動くこと、チームの全員が勝つために自分の最大限のプレーをすること。そういう意味だと私は解釈している。

 少し中田氏の話に傾いてしまったが、優れた先人を手本に夢をつかんでいってもらいたいという願いを込めて、敢えてU-23の選手たちには次のエールを贈る。

 「自分のためにプレーしてほしい」(山内雄司=スポーツライター)

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