【コラム】山内雄司

名古屋 幾多の困難が待ち受けるはず

[ 2016年2月25日 05:30 ]

15年11月25日J1名古屋のGM兼監督就任が決まり、笑顔で記者会見する小倉隆史氏
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 今週末、2016年度のJリーグの幕が開く。優勝争いはもちろんのこと、今季も激しい闘いの数々、予測不能なドラマが私たちを熱くさせてくれることだろう。何年経ってもワクワクは止まらない。これを読んでいる皆さんも、準備万端整えて今か今かと待ちわびているのではなかろうか。

 J1で言えば、連覇を目論む広島、巻き返しを図る一昨年の3冠王者・G大阪、ペトロヴィッチ体制の集大成として頂点獲りしかない浦和の3クラブが今季も軸になるのは間違いないように思えるが、「何言ってんだ、うちのクラブだろ!」との声が挙がるのも当然だ。どのクラブもそれぞれに新シーズンやその先の未来に向けた挑戦を続けている。どのクラブもそれぞれに見所がたくさんある。果たしてスポットライトを浴びるのはどこか?やっぱりワクワクは止まらない。

 さて、数あるなかで個人的にどうしても注目してしまう、いや、するしかないクラブがある。名古屋である。

 少しばかり私事を綴ることを許して頂きたい。サッカー専門誌の記者となった二十数年前、初めて任された大仕事がアトランタ五輪本大会出場を目指すU-23日本代表チームの担当だった。どうしてもそこに集った選手たちには思い入れがある。なかでも前園と小倉は、紛れもなく両輪を成す存在だった。まもなく始まるアジア地区最終予選を前に闘志を蓄えていたエースに起こった惨事。グラウンド脇でその始終を見ていた筆者は、彼の苦悶と慟哭、周囲の緊張、動揺に包まれた空気を今でもありありと思い浮かべることができる。

 もしもあれがなかったら……はもう言うまい。悲劇のヒーローなんて軽々しい形容もすべきではない。無念さや運命と戦いながら必死に歩んできた彼の心情など、千分の一、万分の一も理解などできないだろう。辛気くさい筆者の思い入れや思い出話はここまでにする。今はただ、純粋に小倉隆史が指揮官としてJに、名古屋に、現場に戻ってきたことが嬉しい。胸を焦がさずにいられないのだ。

 とはいえ、簡単にはいかないだろう。むしろ幾多の困難が待ち受けるはずだ。選手として、解説者として様々な経験を積んできたが、指導者としてのキャリアをいきなりJ1で開始するのは、どちらかというと無謀の部類に入るかもしれない。ましてやGМとの兼務である。こちらは前GMの久米一正社長とのタッグということで、すべてを小倉監督が握るというニュアンスとは異なるだろうが、現場の指揮だけではなくチーム編成や経営面での責任を負うことが、果たして正しい選択なのかは不明である。指揮官としては未知数。昨年途中からGM補佐を勤めていたが、こちらもまだ経験は浅く、とてもではないが楽観視などできない。

 闘莉王や牟田、本田らが去った。外国籍選手も入れ替わった。特に闘莉王の存在は大きく、その影響は大きいだろう。代役としてスウェーデン人DFオーマンが加入したが、フィットするには時間がかかりそうだ。FWにもスウェーデンからシモビッチを迎え入れたが、こちらもひとりで打開するというより周囲との連携で得点するタイプに見えるだけに、チームとしての機能を高める時間が必要であろう。チームとしても、G大阪とのパナソニックカップではカウンター対策、セットプレー対策に問題を露呈した。また、ビルドアップやコンビネーションもまだまだ曖昧で、ストロングポイントは見出しにくかった。

 小倉監督は就任会見で、「スマートさ」「テクニカル」「共感」、そして「5人目」というキーワードを挙げたが、現状ではそれらはあくまでも理想論に聞こえる。この大改革には相応の時間と、それに伴う忍耐が必要に思われる。どこで判断するのか、どこまで待つべきなのか、クラブとしても、そしてGM本人としても明確な基準を持ち、それを必要とあれば開示していくことも大切ではないかと感じる。

 とはいえ、現段階であまり腐しても仕方ない、とも思う。高い目標を持つこと自体は決して悪いことではない。大変な責を負ったことは小倉監督自身が誰よりも理解しているはずで、その覚悟をこれからいかに見せてくれるかに期待したい。そして、できることなら胸を焦がす闘いを数多く発信してほしい。(山内雄司=スポーツライター)

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