【コラム】山内雄司

予選と本大会は別物 さらに、その後も見つめていきたい

[ 2016年2月3日 05:30 ]

帰国会見を終えトロフィーを手に笑顔の大島、遠藤、手倉森監督、岩波(左から)
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 リオ五輪本大会出場を決めたU-23日本代表の激闘は、後世に語り継がれるほどのインパクトを伴った。セントラル方式によるグループリーグ+トーナメントという厳しい関門を突破した選手、監督をはじめとするコーチ陣、そして裏でチームを支えたスタッフ陣には賛辞を贈りたい。常にこれまで世界の壁を越えられなかった世代とのレッテルに苛まれ、悔しい想いをしてきたであろう。ここで五輪出場を閉ざしてしまうわけにはいかないという重圧とも戦ってきたはずだ。そんな中で彼らは自らの手で呪縛を解き放った。それは各自、誇りに感じていい。

 前回のコラムで筆者はこう記した。

 『集まっては試合をしていったん解散するホーム&アウェー方式よりも目標が目の前にあるだけに、そこに向かって全員の熱が集約され、ムーブメントとなってほとばしることがある』『選手のみならずスタッフも含めたチームは、時間が濃密なぶん苦労や疲弊する面もあるが、大きく成長する可能性を持っている』

 まさに全員の熱が集約された戦いぶりであった。濃密な時間を過ごすことでチームとしての一体感は日に日に増し、選手たちは逞しさを感じさせるようになった。どんな展開でも諦めず、やるべきことをやり遂げようとする意志が見受けられた。疲弊に関しては手倉森監督の優れたマネージメントによって、GK牲川を除くすべての選手がピッチに立つことで回避された。全員がチームのために貢献しているという自負が、またチームをまとめていくという好循環が生まれたのも大きい。途中出場選手の活躍など、指揮官の用兵も冴えわたった。期待通り、チームは短期間で大きく成長した。本大会に向けての財産は確実に手にしたと言える。

 ただ、その財産をどう生かすかが今後へのカギとなる。成長と自信、チームとしての一体感をリオに持ち込むのが重要となるが、新たな競争が始まる。本大会の登録メンバーは18名。アジアの頂点に立ったメンバーのうち5人は仲間たちの戦いを日本で悔しさを押し殺しつつ眺めなければならない。また、手倉森監督が使用するつもりであると報じられるオーバーエイジが加われば、さらに数人が外れることになる。野津田や中村など負傷した選手たち、関根ら合宿参加組、それ以外でも同年代の選手たちも虎視眈々とリオ行きを望んでいる。親心からならば今回のメンバーを全員連れて行ってあげたいが、そういうわけにはいかない。選手たちも予選と本大会は別物と考えておかなければ、厳しい競争、そしてさらに厳しい戦いには勝ち抜けないだろう。

 それらを踏まえて、選考する手倉森監督のさらなるマネージメント力が注視されるが、もっと大きな視点で言えば、協会がどのような指針や方針で日本サッカーへの将来のために五輪を位置付けているのかが大切である。言ってしまえば、五輪代表は期間限定、年代限定、解散が義務付けられたチームだ。本大会にしてもそこが最終目的ではなく、あくまでも日本サッカーの未来という大きな枠組みの中で強化の一環となるべきものだ。A代表へのステップアップを果たせるほどの選手をいかにして鍛え上げることができるか。つまりは五輪代表に何を求めてブラジルに旅立たせ、何を持ち帰ってもらいたいかという指針が定まっているほどに、将来への財産はより蓄積される。

 よく選手の口から「いい経験になった」との言葉が聞かれる。もちろんそれは間違いない実感であり、選手個人の成長には大きな糧となる。であるならば、協会幹部はその個の経験をどのようにして日本サッカーの将来へ生かしていくかを念頭に、強化指針を常に練り込んでいくことが必要だ。「よくやった」「残念だった」で終わらせずに、何が出来て何が出来なかったか。何が今後の強化へのヒントになるか。精いっぱいぶつかり、次につながる戦いにするのは選手たちだけでなく、協会も同様であろう。

 選手たちのおかげでリオへの期待は膨らんだ。だが、本大会と同じくらいこれからの道のり、その後の道のりも楽しみに見つめていきたい。(山内雄司=スポーツライター)

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