【コラム】山内雄司

輝きを放った金崎と柏木

[ 2015年11月14日 05:30 ]

<シンガポール・日本>前半、先制ゴールを決める金崎
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W杯アジア2次予選 シンガポール0―3日本
(11月12日 シンガポール)
 実に鮮やかな先制点だった。武藤のヘッドでの折り返しを胸トラップから左足を振り抜く。腰のひねりを利かせたボレーでゴール右へ正確に決めてみせた。実に5年ぶりの招集、そしてスタメン起用に期するものがあったのは当然だ。何としてもゴールを、との想いが実ったわけだが、得点の場面以外でも金崎の積極性は随所に垣間見えた。

 前半6分、左サイドでボールに絡み、縦パスを受けて中央の清武に渡し、DFの間に入り込みながらゴール前へ。清武のパスを受けた左サイドの武藤がファーの本田へクロス。本田のシュートはシンガポールGKイズワンにセーブされたが、金崎はこぼれ球にも必死に食らいついていった。まず自分が受けられる位置へ。それが叶わない際は次なるアクションで打てる位置へとスライドする。13分には縦パスを受けてDFふたりを引きずりながらドリブルで突破を図る。クロスはクリアされたが、思い切りの良さは光った。見事なゴール後の21分にも、DFラインと駆け引きしながらボールを呼び込んでヘディングシュートを放つ。残念ながら後半は輝きを失ってしまったが、ワントップとして求められる役割を果たす中で、持ち味を存分に発揮しようとする強い意思あるプレーの数々からは、今後もチーム内の競争激化へ寄与する存在となるであろうことを予感させてくれた。

 もうひとり、久しぶりのスタメンで代表の新たな側面を形成してくれそうな発見をもたらしたのが柏木だ。ボールの持ち方、パスの出し方、そして攻守に顔を出す走力など、独特のリズムで、どこかゴリ押し一辺倒だったチームに柔軟性をもたらし、選手の関係性を高めた。その小気味いいスタイルがハマり、コンビを組む長谷部も前線に進出するなどやりやすそうに見えた。コーナーキックも任され、これも大きな武器となる可能性を秘めている。

 新戦力のいきなりの活躍に、ハリルホジッチ監督も「私の起用は正解だった」と喜色満面。この試合においてそれは事実であり、競争力を高めたという点でもまずは素直に評価していいだろう。もっとも、忘れてはならないのは勝って当然の相手であったということ。失点の場面に限定しても、シンガポールの寄せは非常に甘いものだった。今後、もっと厳しいブロックを築かれたとき、もっと厳しいプレスに晒されたとき、彼らがこの日見せたようなプレーが出来るかはまだ分からない。分からないだけに楽しみでもある。

 以上、変化をもたらしたふたりについて言及してきたが、個人的にもっと魅力的な変化と感じられたのが清武のトップ下起用である。

 柏木がリズムよく供給したこともあるが、清武も相手が寄せる前にシンプルに叩いて本田、武藤、金崎と密接に連係した。前述した6分のチャンスも素早く武藤に渡してDFの裏をかいた。2点目の場面では金崎のパスから絶妙のタイミングで武藤にパスして本田のゴールを引き出している。本人は「スペースがなく、我慢する時間が多かった」と満足はしていなかったが、それでも「いろいろ考えてプレーできた」と語った通り、他選手との距離感や連動しやすさを意識して、簡単にプレーしつつも精度の高いパスを繰り出していた。

 無論、単純な比較は出来ないし、その技術の高さは誰もが認めるところだが、香川は良い形にしようとする余り、人垣の中で却って困難な位置に持ち込んでしまったり、他選手とかぶってしまったりすることもある。この日の相手のように数で守るチームに対しては、この日の清武のプレーがヒントになるかもしれない。

 後半に足が止まり、すべてにおいてスローダウンしてしまった点など課題も散見した。当然ながら目標はここにはなく、安堵したり喜んだりするつもりは毛頭ない。だが、新戦力、新戦法を採り入れつつ、勝つべき試合できっちりと勝ったことは、ひとまずポジティブに捉えていいだろう。

 対戦相手のレベルが上がっていく中で、どのように多くの引き出しを備えていくのか。世界と戦う上で何を取り込み、何を捨てていくのか。楽観することなく、ことさら悲観することもなく、これからもその挑戦を注視していきたい。(山内雄司=スポーツライター)

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