【コラム】山内雄司

極めて特殊であるGKという職業

[ 2015年10月4日 05:30 ]

 改めてそのポジションを背負うことの重大さ、孤独、非情さを知ることになった。

 第12節、鹿島は手痛い敗戦を喫した。ホームチームは開始3分に先制し、すぐさま追いつかれてしまったものの、その後も主導権を握って攻め立てた。しかし、追加点を奪えず1-1のまま後半へ。浦和が盛り返しを見せたものの、それでも鹿島は押していた。「十分にイケる。勝てるゾ」と選手たちも手ごたえを感じながら戦っていたのではないか。

 しかし、そんななかでその瞬間は訪れてしまう。後半27分、左クロスがDFに当たり高く跳ね上がる。クリアに入った昌子と重なってしまった面はあるが、それでもイージーなボールだった。キャッチの声をかけてつかむだけ。だが、鹿島GK曽ケ端は取り損ね、興梠にゴールをプレゼントしてしまった。

 無論、このミスによる失点だけが敗因ではない。ただ、敗戦を呼び込む要因となったのは間違いない。当然ながら試合後の曽ケ端は沈痛な表情で下を向き、それはミックスゾーンでも変わらなかった。ゴールに鍵をかける役目が、鍵を相手に渡してしまったのだから、その悔恨たるや凄まじいものがあるだろう。受け入れがたいが紛れもない現実。誰のせいでもなく、自分のせいであるという苦しみ。どんなに好プレーをしていても、たった一度のミスでそれらは消し飛んでしまう。GKとは本当に因果な商売である。

 この試合では、一方のGKである西川が活躍した。序盤は劣勢の中で少し出るタイミングがワンテンポ遅れるなど不安定さものぞかせたが、それも時間を重ねるごとに修正され、前半44分、後半32分、46分にはビッグセーブを見せ、勝利の立役者の一人となった。試合後、いつものスマイルで浦和サポーターに手を振る西川。うつむく曽ケ端。両者の残酷なまでのコントラストが印象的だった。

 たったひとつのポジション。これを守り抜いて試合に出場し、大きな仕事を一人で担う。DFとの連携は重要だが、与えられた任務はその者でしかできない。その重圧を想像するにつけ、GKへの尊敬の念を抱かずにはいられない。

 先日、サブGKにスポットを当てたテレビ番組があった。名古屋のベテランGK高木がその立場をどのように捉え、日々を送っているのか。高木は1%の出場の可能性があれば、それはゼロではなく、その1%のために最良の準備をしつつ、ベンチでも積極的に声を張り上げ、ペットボトルを率先して運んでチームメイトを鼓舞していた。

 その姿勢にスタジオのタレントらは感嘆していたが、多くのGKが高木と同じように、わずかな可能性に自分のすべてを賭けて戦っている。もちろんのこと試合に出場したいという渇望は強烈なものがあるはずだ。しかし、ポジションはひとつしかない。その座を奪わない限り、来る日も来る日も準備で終わる毎日だ。ポジション奪取には実力以外に、多分に運やタイミングもある。試合経験ほとんどなきまま現役を辞するGKも数多い。サッカーにおいて、光と影をもっとも色濃く映し出すポジションと言える

 極めて特殊であるGKという職業について、もっと知りたい、勉強したいと感じさせてくれる一戦だった。そしてファンの皆様にも、試合会場や練習場で、彼らがどんな戦いを繰り広げているかを注目したら、もっとサッカーへの見地や愛情が広がるのではないか。

 すべてのGKに敬意を込めて、なお一層深く見つめていこうと思う。(山内雄司=スポーツライター)

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