【コラム】山内雄司

ロシアに向けて非常にポジティブ

[ 2015年4月20日 05:30 ]

「W杯4強」を目標に掲げた日本代表のハリルホジッチ監督
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 2018年ワールドカップロシア大会のアジア地区2次予選の対戦国が決まった。シリア、アフガニスタン、シンガポール、マレーシアという国々はいずれも日本より格下であり、客観的にみて楽なグループに入ったと言える。ハリルホジッチ監督も「日本のレベルにはない。全部勝ちたい」とコメントしている。約9カ月に及ぶ長丁場であり、日程的な困難もほとんどない。シリア、アフガニスタンとのアウェー戦が中立国になる可能性もあるが、それにしても準備期間があればさほどの問題はないだろう。正直なところ、最終予選進出はこの組み合わせ決定をもって確実になったと言っていい。

 では、いかなる視点で予選を見ていくべきなのか。対戦国にとって日本戦は勝点3を奪う場ではなく、1で良しとする戦いとなる。まずは守備を固めてカウンター狙い、逆に日本にカウンターの形を作られないように、より後方のブロックを強固にするかもしれない。それをどのように崩していくのか。日本サッカーのみならず、世界中で議論されることだが、改めてこの命題に光を見つける絶好の機会となる。

 2試合を終えてハリルホジッチ監督のサッカーのキーワードとして「縦への速さ」「球際の強さ」が強調されているが、これはどちらも目新しいものではない。縦に速くというと、とかく「放り込みサッカー」を連想し、それではダメだから「繋ぐサッカー」へ、といった具合に、これまでの日本サッカーはともすれば双方を対比するものとしてきた傾向があるが、「縦に速く」と「繋ぐ」は相反するものではなく、状況に応じて仕掛けのための準備をし、縦に入れるところは入れ、入れても跳ね返される場合は相手を誘い出してスペースを生むために繋ぐといった臨機応変さ、柔軟性はこれまでも求められてきたことである。

 また「球際の強さ」に至っては、ハリルホジッチ流でも何でもなく、いわば戦う上での基本中の基本であり、その厳しさの必要性が今更ながらキーワードとして取り上げられる現状こそ憂うべきである。ハリルホジッチ監督が当たり前に必要なことを当たり前に説き、それを救世主の声のように祭り上げるのは避けなければならない。2次予選では必要以上に「やったぞ!」「また大勝だ。強いぞハリルジャパン!」なんてことにならないように、メディアもファンも注意したほうがよい。

 指揮官はGKを除き、招集メンバーをすべて先の2試合で起用した。これは門戸開放と競争激化の強いメッセージとなった。メンバーの固まっていない現在、海外組も国内組もチャンスへ賭ける思いは高まっているだろう。そこで少し気になるのが、リオデジャネイロ五輪組をどのような指針の下に扱っていくかだ。

 五輪代表はあくまでも日本代表強化のステップである。ハリルホジッチ監督が五輪代表選手の日本代表への組み込みを考えた際、協会がどのような判断を下すのか。カレンダーとしては五輪代表は7月まで活動がなく、Jリーグでのアピールによってハリルホジッチ監督の目に留まる可能性はある。それでも五輪優先なのか。あるいは両チームが連携する機会はあるのか。日本代表入りする可能性ある選手が五輪に専念を余儀なくされる本末転倒な事態はこれまでも疑問視されてきたが、もうそういったことのないよう協会がしっかりとした指針を示しておくべきだろう。

 まだ大枠でしか捉えようのないハリルホジッチ監督率いる日本代表だが、未来あるスタートを切ったのは事実であり、ロシアに向けて非常にポジティブな雰囲気の中にある。ただ、だからこそ“当たり前”に浮かれすぎず、収穫と課題を丁寧に見極めていく。そんな2次予選にしたいところだ。(山内雄司=スポーツライター)

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