【コラム】山内雄司

ハリルホジッチ監督が率いる新生日本代表

[ 2015年3月27日 05:30 ]

 ハリルホジッチ監督が率いる新生日本代表はどんなスタートを切るのか。

 新監督はメンバー発表会見で「システムも毎試合準備をする。例えば世界で一番強いチームとも一番弱いチームと対戦するかもしれない。それでも勝つための準備をする」「中盤では異なるオーガナイズを準備する。それはプランニング、システムでも見せることはできるが、私にとって最も大事なのは各選手の役割だ。この2試合で何人かの選手に異なるオーガナイズをプレーしてもらおうと思っている」と語っており、ハリルホジッチ体制の船出を語るには、やはり2試合を通してからでないと適切ではないだろう。

 多くの同業者や解説者、そしてファンの方々がすでに会見を読み解いて指揮官の意向や今後のチーム作りへの展望を述べている。あまり意味のないものだろうが、合前の本稿では筆者もそれに乗っかってみたい。

 まず、就任からの短い期間のなかで出来うる限りの準備をしたな、という印象を受けた。メンバーこそアギーレ体制とほとんど変わらない協会主導によるものだったが、これは致し方ない。ただ、ここまでチームの堂々のメインキャストだった遠藤を外すなど、独自色も滲ませた。また、長友、内田、今野など負傷が癒えない選手も話を聞きたいとの理由で選出した(長友は招集見送り)。出場が危ぶまれる選手を選出しながら、彼らとは別にバックアップメンバーを12人も用意するなど、その意図には疑問も禁じえないまでも、ここにも「私のやり方で行く」という強いメッセージを感じる。スクリーンを使った発表方式も、どこまで必要かと言われればそれほどでもないものだが、敢えて「こうするんだ」と示したのは、協会へのアピール、もっと言えば牽制もあったのかもしれない。

 さて、遠藤についてだが監督はこう語っている。

 「日本代表に長く貢献してきた遠藤は日本のレベルをかなり高くまで上げてくれた。だが、私はW杯ロシア大会のために準備をしている。彼は本当に日本代表のために貢献してくれた。それを忘れてはいけない。彼に対して敬意を表するとここに付け加えたい

 話を聞くべき選手の筆頭であるはずの遠藤だが、敬意は表しても新監督の中では年齢的に構想から外れているということだ。質問に答える形で「ものすごく大事な試合で必要なときがあれば遠藤を呼ぶことも考えている。彼をどうするかはこれからを見ていきたい」とコメントしているが、遠藤を呼ばなければならない事態が来たとしたら、それはチーム作りが上手くいっていないとき、ということになる。もちろん遠藤は現役である限り代表にこだわるだろうし、今後の活躍次第でメンバー入りを果たす可能性はある。それでも、『長い間ご苦労さま』とメンバー発表でわざわざ触れた指揮官には、強い信念を感じざるを得ない。

 その一方で、発表前の試合観戦で活躍した永井や川又をピックアップしつつ、大久保についても名前を挙げて言及するなど、周到に情報を集めて武装するスキのなさを伺わせる。「日本の皆さんは丁寧に仕事をしてくれる。本当に優しく、協力してくれる。今のところ問題ない」と持ち上げながら、「ディテールにこだわって仕事してくれるのを期待する」と釘を刺すのを忘れない。一筋縄でいかない意志と個性が言葉の端々から明らかとなる。自分の流儀に自信があればこそ、であって非常に頼もしさを感じるが、それだけに技術委員会との連携も重要度を増す。「今のところ問題ない」が「問題アリ」にならないよう、あるいはなったときにどう対処するのか。協会の仕事にもさらに注視する必要がある。

 いずれにせよ、新たな旅の始まりはワクワクするものだ。果たしてどんな監督が言う方向性は見える、もしくは見えたのか。2試合で多くを見出すのは無理があろうが、ロシアへ向けて力強い可能性を示してほしい。また、個人的には親善試合といえども『戦う』という勝負事の原点に立った気迫、気概が欲しい。今は「自分たちのサッカーはできた」は要らない。アピール目的でもいい。もっとギラギラ、ガツガツした代表に期待する。(山内雄司=スポーツライター)

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