【コラム】山内雄司

偉大な日本代表 遠藤保仁&長谷部誠

[ 2015年1月23日 05:30 ]

スタンドの声援に応える遠藤
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 イラク戦で遠藤保仁がAマッチ通算150試合出場を達成した。2002年11月の初キャップから足かけ12年。常に日本サッカーの最前線で戦い続ける男の偉大な足跡に改めて驚嘆するとともに、これからも頼むぞ、との想いを抱かずにいられない。いまだ代えのきかない存在であり、まだまだ記録は更新される。本人も「サッカーに年齢は関係ない」といささかも情熱や意欲を失っていない。現在34歳。ワールドカップロシア大会時は38歳となり、出場を危ぶむ声もあるが、彼を脅かしその座を奪う存在は現れるのか。

 かつては筆者も代表チームの高齢化を懸念したが、遠藤にはとことんまで高い壁となって、次代の選手たちに立ちはだかってもらおう。その圧倒的なスキルは強化における競争原理に大きな意義と説得性をもたらす。そう、確かにサッカーは年齢ではない。代表でも長らく活躍し、現在Jクラブの監督を務める人物(氏の指揮権への影響等を考慮して名前は伏せる)が選手を辞して1年ほど経った頃、選手生活にピリオドを打った経緯、その想いを語ってくれたことを思い出す。

 「年齢が高いのはもちろん自覚していたが、納得したわけではない。競争の結果、同等かあるいは自分が少しだけ上という状況なら若い選手を使うのは理解できる。ただ、その時点で私は練習でも試合でも負けたことはなかった」

 氏が当時在籍していたクラブは、諸事情で急速な若返りを図った。その年もバリバリのレギュラーだった氏の心には、競争もないままにその座を追われた無念さが残った。サッカーは年齢ではないはずなのに……。

 ロシアということを考えると、もうひとり偉大な節目を迎えてさらなる高みへ歩もうとする選手がいる。長谷部誠である。

 彼はヨルダン戦で日本代表主将としてAマッチ56試合出場を飾り、データが残る89年以降で宮本恒靖氏を抜いて“日本一の主将”となった。2010年のワールドカップ南アフリカ大会前に大任を任され、それ以来3年半に渡り、現在まで3人の指揮官の下で左腕にマークを巻いている。そのリーダーシップは今さら言及するまでもない。

 昨年、シャルケの公式ツイッターチャットで内田篤人がファンから無人島に3人連れて行くとしたら、と質問され、「大工、漁師、長谷部」と答えた際には内田のセンスにニヤリとさせられたが、あながちユーモアだけでもなく、それほどまでに信頼され、愛され、大切な存在として認知されているということだろう。アギーレ監督の八百長関与疑惑の告発が受理され、それに関する質問がなされる中でも「影響がないと断言できる。チームは全員が同じ方向を向いており何の問題もない」と雑音をシャットアウト。本田圭佑がレフェリーの笛に関して発言し罰金を科せられた後にはチームメイトに気を配り、ヨルダン戦では自身も悪質と思われる相手のファウルに苛まれながらも、皆に「熱くなるな」と諭して支えとなった。無論、言葉だけではなくプレーでも真価を発揮している。

 これは個人的な見解だが、グループリーグ全勝突破のMVPは主将・長谷部の献身、コントロール、凄みにあると見る。アギーレ体制における中盤の底、いわゆるアンカーとしてカウンターの芽を摘む察知能力と機動力は、例えば横のスペースを使われた昨年のオーストラリア戦などから比べると確実に進化している。自らのポジショニングもそうだが、長友佑都や酒井高徳を巧みにリードし、スペースを使われない配慮が成されていた。まだ改善の余地はあるが、コンビネーションは高まっているようだ。その上で攻撃にも関与する姿勢は崩さない。ヨルダン戦の先制点の場面では中盤でパスのやり取りで状況を確認し、3メートルほどのドリブルでタメを作り、すっと引いてきた乾に対してすかさず縦パスを付けてゴールへの布石を打った。相手選手の頭数が揃う中でどう崩すかは日本代表が抱える課題のひとつであるが、この長谷部のプレーはそれを打開する一例として取り上げられるべきものであろう。

 18日に31歳となり、ロシア大会は34歳で迎えることになる。頭も身体もフル回転が要求されるポジションであり、年齢を不安視する声があるのは事実だ。ただ、彼もまたサッカーは年齢ではないを体現する選手であり、益々の進化が期待される。彼にもさらに高い壁としてそびえてもらおう。それを乗り越えようとする者たちの数多い出現を願いつつ。

 最後に私事ではあるが、おこがましくも好きな言葉を記しておく。遠藤や長谷部のようには到底なれやしないが、50歳を数年後に控えてわずかな距離で息切れし、1センチの段差につまずく度に、半ば自嘲気味に、半ば自らを奮い立たせるために唱える念仏だ。

 『Age is just a number.』

 できることなら誰かの壁となり、戦い続けるおっさんになりたいものである。もう無理か?(山内雄司=スポーツライター)

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