【コラム】山内雄司

ドイツは美しく、逞しく、力強かった

[ 2014年7月17日 05:30 ]

ドイツイレブンを祝福するサポーター。その数は実に50万人!!
Photo By AP

 ドイツはどこまでも美しく、とてつもなく逞しく、溢れんばかりの力強さを持っていた。テクニック、フィジカル、メンタルを併せ持つ綺羅星のごときタレントが、レーブ監督のタクトのもと、90分、あるいは120分間のチームプレーをまるでサボらずに遂行する。その一体感は互いへの深い信頼感から醸成されるものだろう。レーブ体制8年間の蓄積と、そこから得られた揺るぎない自信がそこかしこから発散される。ベンチの選手も来るべき出場に備えて、また出場の機会がなくても、その目はピッチの選手と違わぬ闘志の光を携えていた。

 よく言われる『個』か『組織』か。そんな議論は不毛だとばかりに、ドイツはチームとしてタレントが機能した。もっとも相応しいチームが頂点に立ったという点において、大会は素晴らしいフィナーレを迎えたと言える。

 多くの選手が輝いたドイツの中で、チームのアイコンとなったのがノイアーだ。GKにしてフィールドプレーヤーと遜色のない運動量は驚異的であり、プレーの約30%がペナルティーエリア外というのも型破り。的確な判断と優れた足技は、GKの概念をも打ち破るものであった。もちろんエリア内でも無類の強さを見せつけた。とにかく動きに隙や癖がない。そのため、シューターはコースを突き切れず、ノイアーの圧力に屈していった。本当に恐るべきGKが大舞台で出現したものだ。これにより、フットボールは新たな時代へ突入する。そんな予感に胸躍るほどのプレーだった。

 大会のMVPにメッシが選出されて物議を醸している。筆者も疑問に思うひとりであり、多くの方の指摘通り、ノイアーが受賞すぺきだと考える。優勝の立役者であり、チームの、大会のアイコンとなり、誰よりも衝撃を与えた。衝撃という面ではハメス・ロドリゲスも有力だが、やはり7試合を通じてハイパフォーマンスを演じたノイアーで決まりだ。メッシも準優勝に貢献したが、本人も複雑な思いではないだろうか。

 個人的なMVPはノイアー。しかしここで敢えてもうひとり、影のMVPとしてその名を記してみたい。これもあくまでも個人的な表彰であるが……。

 その選手はシュバインシュタイガーである。左膝負傷の影響でグループリーグ第3戦のアメリカ戦で初スタメンとなったが、この試合でも出遅れを感じさせないプレーぶりを見せた。そして、トーナメントに入ってから徐々にギアを上げていった。

 アルジェリア戦は激しいまでのブロックに苦戦したが、アンカーとして君臨するようになった準々決勝のフランス戦からは圧倒的な存在感でチームを牽引した。ありったけの闘志を屈強な体躯でコーティングし、ピンチの芽を摘み取っては、正確無比なパスで守から攻への切り替えの先鞭となった。彼が中央で絶対的な仕事をしたからこそ、クロースやケディラ、ミュラーらは持ち味を発揮できた。それは守備陣にも言えることで、シュバインシュタイガーの献身があったからこそ、ボアテング、フンメルスも安定した。

 ノイアーにしても、中はきっちり抑えてくれるという確信があればこそ、迷いなく飛び出せたような気がする。数プレー前に巻き戻れば、そこには必ずと言っていいほど、シュバインシュタイガーが身体を張る姿があった。サイズに恵まれ、テクニックも抜群でパスの精度は高く、しかも急所を突く。ヘッドの勝率も高かった。これほど頼りになる男はそうそういない。

 以前はその風貌も相まって、イケイケの暴れん坊といったイメージもあったが、三十路を目前に控え、ベテランらしい落ち着きとチームへの配慮が伺えた。周囲に気を配り、特にクロースら若手が思い切りプレーできるよう、指示を送り、身を持って激しい闘いで勝利の必要性を説いた。円熟期に入り、よりフットボーラーとしての深みを増しているように感じる。

 「彼(シュバインシュタイガー)はチームのボスである」(レーブ監督)

 ボスを中心に、数多のスターが勝利の道を突き進む。ドイツの進撃は当分続きそうな気配がする。(山内雄司=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る